■各世帯に配布、抜群の信頼度… 人気上々、順番待ちも
 国の三位一体改革自治体財政が厳しさを増す中、自治体が発行する広報紙に民間の広告を“解禁”する試みが県内でも広がっている。14市のうち水俣、八代、山鹿が既に実施しており、熊本、天草も近く始める予定。各世帯に確実に届けられる広報紙の広告掲載は一部で順番待ちとなる盛況ぶりで、自治体の「貴重な収入源」(山鹿市)として定着しつつあるようだ。「年々、掲載依頼が増えています」。2004年度に“解禁”し、県内自治体の先駆けとなった水俣市は広報紙の最下段に縦4.2センチ、横16センチの広告枠を確保。最初こそ「広告が集まるか不安だった」というが、収入額は初年度の8万円から昨年度は25万円に増えた。「福岡の企業からも広告があり、全世帯に配布する“媒体”として、企業の関心の高さを感じた」と担当者。07年度から始めた山鹿市は当初、半年間の掲載契約を設定していたが、広告依頼が相次いだため、新たに1カ月と3カ月の掲載期間を設けた。年間収入は40万円。同市広聴広報係は「掲載期間の細分化で、数多くの企業が登場可能。それでも順番待ちが続いており、本年度の広告枠は全部埋まっています」実施中の3市の広報紙のうち、最大の稼ぎ頭は八代市。05年度から掲載を始め、毎月30ページ前後の広報紙に計16枠を設け、年間400万円の収入につなげている。「財政への貢献度は大」と担当者。「行政が発行するという『信頼度』が広告主に評価されているのでは」と分析する。各市とも「公共性を損なわず、政治性、宗教性がないこと」などを掲載基準にしており、水俣の場合、医療や福祉関係、進学塾のほか、結婚相談所や講演会案内など幅広く受け付けている。県内広報紙で最大の約29万部の発行部数を誇る熊本市は5月1日号から広告掲載を開始。天草市も6月1日号から始める。

同記事では,熊本県内の都市自治体の広報紙で,民間及び各種事業体等からの広告掲載の取り組みが進められていることを紹介.自治体HPでもバナー広告を掲載するなど,「財源は自ら稼ぐ」流れの事例.
井出嘉憲先生によれば,広報(PR)が現代行政において登場する背景には,①行政の民主化,②合理化,③人間化の要請があるためと分析されてきた*1.これらの分析は,いまなお広報という行政現象の生成要因の分析としては,一つの見解としては参考となる.ただ,現在の広報の動向を考える際には,別の視角からの分析も必要かと思う.例えば,『行政管理研究』に掲載さている金井茂樹先生の論考では,千葉県内市町村の広報誌と地域情報誌を対象にそれぞれの機能面からの比較分析が行われてる.同論考の分析結果では,広報誌には,発行部数,閲覧率,ユニーク性,信頼性等において,地方情報誌よりも優位にある*2とされている.このことは,広報というメディアが,公的情報交流のみならず,公民双方にとってのマーケティング効果が高い媒体であることを明らかにしており,今後,公民の交流化が促進する可能性を含む.では,交流が促進するうえでの要因を考えてみると,同記事の分析にある「信頼性」との結論に一見は収束しそうではある.ただ,その「信頼性」自体がマジックワード的であり,具体的な含意を更に考察する必要があると思う.

*1:井出嘉憲『行政広報論』(勁草書房,1967年)22〜26頁

*2:金井茂樹「地方公共団体の広報誌と広告に関する一考察 」『行政管理研究』第121号(2008年3月)53〜54頁