2011年以降の京都府政の指針となる「明日の京都」策定に向け、10年後の府のあるべき姿を議論する懇話会(座長・竹葉剛府立大学長)の初会合が4日、京都市上京区の府公館であった。委員の専門家らは、低炭素型社会の実現や地域のつながりを重視したまちづくりの必要性を訴えた。
 懇話会は、医療や子育て、地球環境、教育、文化活動などに携わる21人で構成される。 京都府像の検討に向けて、委員からは「南北の地域格差を念頭に置いた府政を」「世界への発信を意識する必要がある」「心の豊かさを見直す機会に」といった意見が出た。山田啓二知事は「近年は生きがいに起因した犯罪が増えている。従来の要望型の計画ではなく、時代の変化に応じた価値観を示すことが大事だ」と話した。

同記事では,京都府において,従来の総合計画の計画期間終了後の,2011年以降の「新たなビジョン・基本政策の方向・基本戦略」を検討するための懇談会を開催したことを紹介.同会の内容については,同府HP参照*1
自治業界」にこの身を置き,自治制度(又は自治の仕組み)を観察していると,自治制度(又は自治の仕組み)間での補完性(又は代替性)の可能性が高いことに気付く.そのなかで,個人的にはこれは最適な提案と思いつつ長らく想念しており,一部で口頭でお話した折りには,大いに顰蹙を買った事項として,地方自治法第2条第4項の「基本構想」の取り扱いについてがある.同基本構想制度は,松本逐条的には,「急激な地域経済社会の変動のなかにあつて市町村が真に住民の負託に応え地域社会の経営の任務を適切に果たすためには,市町村そのものが将来を見通した長期にわたる経営の基本を確立することが必要」*2として制度化されたと整理されている.では,果たしてここで言う「経営の基本」とは何を指すのであろうか.個人的には,「基本」である以上,時代を超えて共有されるもの(正確には,共有されると予期されるものか)ではないかと考える.例えば,自治体現象に関連する各種主体に関する規定,自治体と住民との関係,自治体内の運用に関する事項(情報公開・情報公表・参加)等が想起される.これらを「経営の基本」と位置づけることは適当ではないだろうかと思う.そして,現在,これらの事項が定められているものといえば,いわゆる「自治基本条例」ではないだろうか.下名が予てから想念していることは,基本構想と基本条例の一体化(又は代替化)である.
まさに,自治基本条例が「自治自治体という政策システムが機能する「場」において,地方分権改革や市町村合併によって変動した価値や情報という磁力線を張り替えることによって,自治体における自己決定・政策形成という現象の活性化を目指すもの」*3であるとすれば,基本構想制度に期待される制度趣旨とはそう大きくは異なることはないのではないだろうか.何よりも,これらの「経営の基本」(のための理念・手法)は,時代時代で若干の入替,改修があったとしても,大きく入れ替わるものではないのではないだろうかとも思う.何よりも,「コロイド」的に「政策粒子」が溶け込み見過ぎている基本構想の「濃度」が還元されるのではないかと思っていた.ただ,上述の通り,個人的に,自治業界関係者に,折に触れお話をしてみても,下名の論点提示が上手くはないためか,基本構想制度支援者側,自治基本条例支援者側の双方何れにおいても,余り議論に乗っていただくことはなく,制度(仕組み)論としても展開できずにいる.
そのなかで,同記事,そして,同紙の別報道*4を読み,下名は,心から驚嘆した.府レベルではあるが,なんと,基本構想に準じるといえる長期ビジョンを条例化するという内容であったためだ.上記の同府HPを拝見させていただくと,長期ビジョンと,中期計画の上位に「基本条例」を位置づけるとある*5.頭の中にあった虚像が,実像へと動き始める様相を知ると,誰しもが思う制度(仕組み)であったのだなあと思いつつも,その実現に向けた検討には大いなる関心を持たざるを得ない.同府の動向は,その内容次第では,市町村レベルでの基本構想制度自体の意味づけを大きく影響を及ぼす可能性もなくはない.要経過観察.個人的には,この基本構想(及び総合計画)に関して,その制度形成時の趣旨,その後の運用状況の観察をさせていただき小論にまとめたこともあった*6.その後の展開も気になる頃,そろそ観察再開の時期か.
基本構想制度が創設されて,来年で40年.不惑の時期を迎えようとするなか,敢えて,その制度当初の趣旨を現代風に再調整し,制度自体の再検討を行っても良いのではないだろうか.

*1:京都府HP(明日の京都ビジョン等の検討(ポスト新府総))「明日の京都ビジョン懇話会の概要と開催のお知らせ

*2:松本英昭『逐条地方自治法第4次改訂版』(学陽書房,2007年)34頁

新版 逐条地方自治法

新版 逐条地方自治法

*3:岩橋健定「自治基本条例と住民自治森田朗・田口一博・金井利之編『分権改革の動態』(東京大学出版会,2008年)188頁

分権改革の動態 (政治空間の変容と政策革新)

分権改革の動態 (政治空間の変容と政策革新)

*4:京都新聞(2008年8月2日付)「「明日の京都」策定着手へ 11年以降10年の府政指針」)

*5:京都府HP「明日の京都ビジョン等の検討(ポスト新府総)

*6:松井望「総合計画制度の原型・変化・課題」『都市問題』第94巻第10号,2003年,91〜112頁