兵庫県と神戸市は四日、今年三月末(県は一部六月末)に退職した課長級以上の職員の外郭団体や民間企業などへの再就職状況を公表した。「天下り」とも批判される再就職状況を県と神戸市が自ら公表するのは初めてで、透明性向上が狙い。県では退職者百二十三人のうち百八人、神戸市では百二十人のうち百八人が再就職しており、割合はともに九割程度に上った。
 全国的には二十都道府県が再就職の情報を公開。十七の政令指定都市でも、札幌や横浜、大阪市など七市が明らかにし、京都市は人数だけを公表している。県の再就職者百八人の内訳は外郭団体が最も多く、三十三人(二十三団体)に上った。以下、県への再雇用(再任用職員や非常勤嘱託員)三十一人▽県私立幼稚園協会や県保育協会などの関係団体など二十九人▽民間企業十五人-の順だった。公表した情報は、退職時の役職名や再就職先の団体名や役職など。個人名については「個人情報保護との関連で非公表を前提にとりまとめた」(井戸敏三知事)として公表しなかった。県は今年二月、従来は部局ごとに扱っていた民間企業や関係団体などへの再就職を管理する「県退職者人材センター」を設置。それに合わせ、再就職を希望する職員には希望する職種や年収などの「調書」提出を事前に求めており、本年度から再就職情報の一元的な管理を始めていた。一方、神戸市は個人名も含めて公表。六十四人が市の外郭団体に再就職しており、最も人数が多かったのは社会福祉協議会の八人だった。公園緑化協会が五人、都市整備公社と開発管理事業団、防災安全公社が各四人-などとなっている。市の再雇用は三十四人で、生協や県信用保証協会といった関係団体などには七人、病院や建設技術関係など民間には三人が再就職していた。同市人事課によると、「市の公共工事を請け負ったり、取引をしたりしているところはない」としている。(小森準平、藤原学

同記事では,兵庫県と神戸市で,課長級以上の職員の退職後の再就職状況を公表したことを紹介.神戸市の再就職状況については,同市HPを参照*1
同市の場合,年金受給年齢との継続性からか,120名の退職者中108名との高い再就職率.また,自治体職員という業態の「スイッチング・コスト」(switching cost)が高いためだろうか,旧来の業務から大幅な変更が行い難く「ロック・イン」(lock in)*2され,外郭団体及び同市嘱託への再就職率の高さは,自治体行政上の特徴か(その再就職希望に対応可能な,外郭団体が設置されていることは,政令指定都市都道府県ゆえの特徴かとも思われ,他の多くの自治体には余り該当しないのかとも思うが).
また,同記事にもある兵庫県における旧来は各部局毎で行っていたものの,一元的な管理を図るようになったという.この旧来の「分権的」ともいえる退職管理の方式もまた興味深い.国における大臣官房秘書課*3による「集権的」な管理とは異なり,自治体行政上の特徴か(特に,規模の大きい自治体(都道府県レベル)では一般的なのだろうか,要観察).
ただ,このような自治体における退職管理.その合理性を説明する仮説としてはどのように考えればよいのだろうか.例えば,国レベルの退職管理については,先の猪木武徳先生の論考にあるように,「早い昇進」を前提とした人事管理運用全体のなかで,「天下り」を「遅れて支払われた報酬」(deferred compensation)として捉え,「官僚機構の内部市場」「官僚機構と民間部門との人材配分バランスを保つために案出された報酬装置」(184〜185頁)として捉えることも可能ではある.では,自治体の場合にはどのような合理的な説明を考えればよいのだろうか.いわゆる「遅い昇進」の人事管理運用とともに,「勤め上げる」ことが常態化するなかでは,定年後の上記のように年金制度との連続性(補完性)としての処遇であれば,いわば「補われて支払われた報酬」(complete compensation)として捉えることが適当なのだろうか.
国における退職管理とは異なり,余り観察結果が共有されていない自治体における退職管理の状況.他の政令指定都市の公開データ(札幌市仙台市横浜市静岡市名古屋市大阪市等)とともに,まずは重要な内容.

*1:神戸市HP(人事課)「神戸市退職者の再就職状況の公表について

*2:梶井厚志『戦略的思考の技術』(中央公論新社,2002年)124〜127頁

戦略的思考の技術―ゲーム理論を実践する (中公新書)

戦略的思考の技術―ゲーム理論を実践する (中公新書)

*3:猪木武徳「人的資源から見た戦後日本の官僚組織と特殊法人」近代日本研究会編『戦後日本の社会・経済政策』(山川出版社,1993年)180頁

戦後日本の社会・経済政策 (年報・近代日本研究 (15))

戦後日本の社会・経済政策 (年報・近代日本研究 (15))