都市空間制御の法理論

都市空間制御の法理論

「生活環境空間ないし都市空間」(1頁)における法的仕組みを対象に,大橋洋一先生が00年代に執筆された各論考を,統一的な観点から纏められた同書.「時代精神に即した法理論を形成したい」(鄯頁)との視座から,国土・都市空間,都市生活,分権型組織それぞれにおける法制度と制度設計を対象に実態面からの制度分析が進められ,これらを踏まえて,制度変革の法理論が構想されている.
多種多様な各法制度に対する考察を拝読すると,「行政制度諸改革」の時代のなかでの,行政による紀律形態の多様性の様相を理解することでき,制度設計分析・執行分析おいて,前提条件とされている従来の思考様式・認識様式からの転換を求められる刺激的な一冊.(自治)行政への観察の際には,必読.
個人的には,第7章において論じられた,自治体総合計画に対する論考は,大変興味深く拝読.「一般制度は林立しているのではなく,相互に関連付けられる形で機能している」,「計画策定制度を中核として,情報公開制度,市民参加制度,政策評価制度,予算・財政制度が連結された点に,総合計画制度の進展が認められた」(163頁)と分析には,なるほどと思う.
1月1日付の本備忘録において再読させて頂いた,森田朗先生による『許認可行政と官僚制』*1とともに,学部生の頃に拝読し「行政への研究こそが,面白い」と思った著作のもう一つが,大橋洋一先生による『行政規則の法理と実態』*2.その後,行政学を選びつつ,更には,両著作が持つ行政学的思考と行政法学的思考の素養は,全く欠けてしまっている下名ですが,変わらぬ愛読者の一人として,各論考を楽しむ.

*1:森田朗『許認可行政と官僚制』(岩波書店,1988年)

許認可行政と官僚制

許認可行政と官僚制

*2:大橋洋一『行政規則の法理と実態』(有斐閣,1989年)(刊行20周年か,今年の年末に再読かな)

行政規則の法理と実態

行政規則の法理と実態