城下町を核とした滋賀県彦根市のまちづくりプラン「歴史的風致維持向上計画」が19日、国の認定を受けた。彦根城など旧彦根藩時代の遺産を街のシンボルと位置づけ、2008年度から17年度まで10カ年で、市中心部に残る足軽屋敷、武家屋敷などの保全、活用を本格化させる。計画は、昨年11月施行の「歴史まちづくり法」に基づいて策定。今回が法施行後初めての国認定で、彦根、金沢、萩など5市が受けた。対象となる事業費の2分の1から3分の1の補助金が得られる。
 彦根市は、琵琶湖、芹川、JR東海道線に囲まれた約400ヘクタールを、保全活用の重点区域に設定。全国的に珍しい建造物「善利(せり)組足軽屋敷辻番所」、中級武家屋敷「旧池田屋長屋門」、藩校講堂「金亀(こんき)会館」など5施設の修理のほか、埋め立てられた外堀の一部復元など、総額約8億円の事業を盛り込んでいる。国の認定を受けて、獅山向洋市長は「先人から受け継いできた彦根城下町の風情や情緒を生かした『歴史まちづくり』に取り組みたい」とコメントした。

同記事では,彦根市において策定された「歴史的風致維持向上計画」が国の認定を受けたことを紹介.
同記事にもあるように2008年5月施行の地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律(歴史まちづくり法)を受けての認定.同法については,国土交通省HP*1を参照.同記事にある5都市は,金沢市高山市亀山市彦根市萩市*2であり,それぞれの計画内容については,各自治体HPを参照*3
同法に関しては,「景観法が景観上の不調和をなす建築物の規制というマイナス要因削減を主目的とした法律であるのに対して,歴史まちづくり法は歴史を活かしたまちづくりを推進するというプラス要因付加を目指した点が特色」*4とその特色が整理されるように,景観法と併置されることにより,景観法による規制,同法による経済という政策手法が「複合化」*5されており,景観法というStickを機能させるためにも,同法のようなCarrotが担保され,両々相俟って,景観保全に向けた選択構造が担保されることになるといえそう.
ただ,同法では,同法第5条に「歴史的風致維持向上計画」を策定の上,国交相の同計画の認定申請が必要とされており,更に,同認定に要する計画が「期限付きの計画立案という制度」であるとして,「まちづくりは鍋物のように煮込むことが大切だとしたら,どうも歴史まちづくり計画には圧力釜で短時間に調理してしまうような力任せのところが感じられる」(92頁)との評価もある模様.また,同計画の策定は,地方分権改革推進委員会の「義務・枠」ではどのような判断をされているのだろうかと思い,下名の理解不足のため,いまひとつ使い方を熟知できない『第2次勧告』の「(別紙1)義務付け・枠付け条項及びそのメルクマール該当・非該当の判断」のうち,含まれていそうな「6都市」「9建設・住宅」「10教育・文化」の項目を見てみるも,同法自体を見つけ出すことができず*6,これまた残念.
個人的には,2008年9月17日付の本備忘録でも取り上げた「歴史文化基本構想」とも,ほぼ同一のものを対象とするのではないかとも想定され,同計画と同計画間での連携性の確保が進むかは,興味深い観察点.特に,同計画の所管が今回の5都市を把握できる限りで見てみると,企画部門(金沢市萩市),又は都市計画部門(高山市亀山市彦根市)の何れかと,教育委員会との共管が行われていることが大半の様子.計画間の連携性のための機構間での調整形態についても興味深い.

*1:国土交通省HP(都市・地域整備関係歴史まちづくり)「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律

*2:時事通信社(2009年1月19日付)「金沢、高山など5市初認定=歴史まちづくり法で−金子国交相

*3:金沢市HP(観光情報歴史まちづくり)「金沢市歴史的風致維持向上計画」,高山市HP,「高山市歴史的風致維持向上計画」,亀山市HP(行政計画)「亀山市歴史的風致維持向上計画の認定について」,彦根市HP「彦根市歴史的風致維持向上計画(素案)」(確定された計画は把握できず.パブコメのみ,残念),萩市HP(企画課)「歴史まちづくり法案の概要と今後のスケジュールについて

*4:西村幸夫「歴史まちづくり法の特色と法制定の意義」『季刊まちづくり』21号,2008年,90頁

季刊まちづくり 21

季刊まちづくり 21

*5: Marie-Louise Bemelmans-Videc, Ray C. Rist, Evert Vedung,Carrots, Sticks, and Sermons: Policy Instruments and Their Evaluation,Transaction Pub,1998,pp. 250-257

Carrots, Sticks, and Sermons: Policy Instruments and Their Evaluation (Comparative Policy Analysis Series)

Carrots, Sticks, and Sermons: Policy Instruments and Their Evaluation (Comparative Policy Analysis Series)

*6:地方分権改革推進委員会HP(委員会の勧告・意見等)『第2次勧告 〜「地方政府」の確立に向けた地方の役割と自主性の拡大〜』(平成20年12月8日)』「(別紙1)義務付け・枠付け条項及びそのメルクマール該当・非該当の判断