県は、商品力などがある県産品を推奨する制度を新たに設け、23品目を決定した。土産袋でなじみの「み」の文字デザインと「県推奨 優良県産品」が明記されたマークを3年間表示できる。だが、これとは別に、県には農産加工品が対象の「地域特産品(Eマーク)」認証制度があり、商品によっては、県の二重の“お墨付き”がつくことになった。部局間の縦割り行政を露呈した、消費者には分かりにくい「県認定」が今後も続きそうだ。
 優良県産品は、県内産の素材を使った農水産・畜産加工品などが対象。市場性やデザイン、価格などの商品力や、保健所による製造所の立ち入り衛生審査など「厳格な基準」(県)をクリアした商品が選定される。本年度は66品目が申請され、うち、みやざき地頭鶏の薫製や、ちりめんじゃこ、都農ワインなど23商品が合格した。物産フェアなどでPRされる。今回の新制度は、商工関係の商業支援課が担当。一方、農政関係の営農支援課は11年前から、千切り大根やたくあん漬けを「県地域特産品(Eマーク)」として認証、22業者が登録している。うち2業者が優良県産品にも合格し、両方の「県認定」を得た。
新制度を発表した会見で、Eマーク商品との違いを問われた東国原英夫知事は「担当部局の違い。縦割りですね」と自嘲(じちょう)気味。県にはこの2種類のほかに「認定マーク」が10種類程度あるというが、統一する考えはないという。また、優良県産品には、東国原知事に似せた知事イラスト(シール)を推奨マークと合わせて張ることも可能。だが、Eマーク商品については、知事イラストと併用して販売することを4月から禁止するよう県が業者に要請しており、対応がばらばらだ。知事は冗談とも投げやりともつかない口調で語る。「福祉保健部も認証とかできそうだが、これぐらいで抑えておかないとまずい。マークが2つも3つもあって、私のイラストが付いたら、商品が見えないんじゃないかなあ」

同記事では,宮崎県において,ほぼ同一の県産品に対する,県の認証制度が併設されていることを紹介.道内については,全国紙が先に報道されているのは*1,同知事の「トップセールス」の賜か.
セクショナリズムをおぞましい病理現象としてだけ処理するのではなく,組織の生理に根ざした現象」*2と見れば,同記事の状況もまた「生活のエッセンス」(218頁)か.ただ,同記事にもある「知事イラスト(シール)」の貼付の可否に関しては,例え,「地域特産品」としての認証だけでは不可となるにしても,同記事にある2品のように,「地域特産品」でありかつ「優良県産品」となれば,これもひとつの「分離を通じての統合」(220頁)の現れともいえそう.
ただ,何れの記事においても共通されている,単なる組織的な「生理現象」からの説明のみならず,両部署が整備している制度が認証制度であることも,同制度の叢生が生じている要因の一因かとも考えられる.つまり,「行政による古典的検査手続と並ぶものであり,私人たる専門家がその手続内で固有の役割を果たす」*3ことに特徴がある「品質保証手続」であり,「新しい規律モデル」(141頁)としての認証制度.品質保証の仕組みとしては,品質保証というモニタリングに関して製造者側への委任に基づく仕組みともいえ,行政側の規制上の手続コストは低くなる(これは,被規制者側も同様ではあるが).そのため,同制度に関しては叢生し易いとも考えられる.認証制度という「規律モデル」の観察もまた,自治体行政の観察上は興味深い課題.果たして,同記事内での知事発言のように「福祉保健部」でも整備されるのか,要観察.

*1:毎日新聞(2009年2月4日)「優良県産品:「縦割り行政」…役割重複? 制度を導入、加工食品23品目認定 /宮崎」,読売新聞(2009年2月5日)「県が優良県産品推奨制度 商品力で23品目初認定」,朝日新聞(2009年2月6日)「東国原知事ぼやく 県産品「お墨付き」縦割り行政で混在

*2:今村都南雄『官庁セクショナリズム』(東京大学出版会,2006年)210頁

官庁セクショナリズム (行政学叢書)

官庁セクショナリズム (行政学叢書)

*3:エバーハルト シュミット‐アスマン『行政法理論の基礎と課題』(東京大学出版会,2006年)364頁

行政法理論の基礎と課題―秩序づけ理念としての行政法総論

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