姫路市は、海外出張に赴く市長が身の回り品を買うために支給する「支度料」(4万3120円〜12万3200円)を、2009年度から廃止する。約60年前の法律に基づいて続く手当だが、「時代に合わない」と市民が昨年、問題提起していた。市は「海外旅行が一般化し、市民の理解を得られなくなったため」としている。
 1950年施行の国の旅費法に定められ、市は条例で準用。背広やスーツケースなど、外国で「品位を保つ」物品の購入などのため、支払われてきた。ところが、生活が豊かになり、海外旅行が珍しくなくなった現在も継続。07年11月、市の友好都市の中国・太原市などを訪問した石見利勝市長に、4万3120円の支度料を支払い、さらに、同伴の夫人にも、同額を出した。市内の男性が昨年7月、その支出に疑問を投げかけ、「支度料なしでも渡航は可能。夫人に支払うのもおかしい」と住民監査請求。市監査委員は同9月、「妥当な範囲」と訴えを退けたが、「社会情勢の変化に対応し、十分に検討を加えられたい」と意見を添えていた。
 市は、神戸市が「時代にそぐわない」と廃止(03年4月)したことなども考慮し、支払わないことを決定。今後、市議にも当てはめる。また、夫人の旅費は、相手側からの同伴の求めがない限り、公費から出さないとした。市国際室は「監査委員の意見を重く受け止めた」としている。

同記事では,姫路市において,2009年度より,海外渡航の際の支度料を廃止する方針であることを紹介.
同記事にもある,住民監査請求は棄却されたものの,「支度料は,出張先及び出張期間等を考慮し,外国旅費内規第6条,別表及び外国旅費算定表に基づいており,妥当な範囲内の支給であるが,社会情勢の変化に鑑み,今後,慎重な対応が求められている」*1との見解も示されており,更に同記事もあるように,「意見」として「今後,姉妹・友好都市等交流事業の推進に当たっては、社会情勢の変化に対応し,市費による夫人同伴及び支度料の支給については,十分に検討を加えられたい」(21頁)と,検討も求められていた.
「出張又は赴任する職員が,外国において日本国民としての品位と体面を保つために必要な支度をととのえさせるための費用にあてるために支給される旅費」*2である支度料.品位と対面を保つためにも,時差や急激な気候変化にある海外において「もうろう」とならないように体調管理のためなどにも利用される分には一定の意義があるのかとも思わなくもないが,中央政府においても,2009年度より廃止の方針の模様*3
明治4年の遣欧使節団においても,一回限りながら「相当な額」(特命全権大使は900両,副士は540両,一等書記官は375両,二等書記官・三等書記官は250両,四等書記官は180両)が支給されており,その額もあってか「臍栗金」*4となっていたともされる.旅費に関しては「先例を踏襲する傾向が強かった」*5とはされるものの,よもや明治期の「臍栗金」の慣行までを「踏襲」されてきたことはないかとは思われるが,自治体・中央政府レベルでの廃止の方針は,他の自治体へも波及されるのだろうか.要観察.

*1:姫路市HP(監査事務局監査結果のご案内住民監査請求監査結果平成20年度 住民監査請求 監査結果)「住民監査請求(太原市友好都市提携20 周年記念訪問に伴う経費)に係る監査の結果について(姫監公表第14号平成20年9月18日)」20頁

*2:瀧野欣彌編『地方公務員制度3 給与・旅費・公務災害補償』(ぎょうせい,1991年)326頁

給与・旅費・公務災害補償 (地方公務員制度)

給与・旅費・公務災害補償 (地方公務員制度)

*3:日本経済新聞社(2008年11月14日付)「海外出張の「支度料」廃止 政府、事務経費100億―200億円削減

*4:田中彰岩倉使節団『米欧回覧実記』』(岩波書店,2002年)117,120-121頁

岩倉使節団『米欧回覧実記』 (岩波現代文庫)

岩倉使節団『米欧回覧実記』 (岩波現代文庫)

*5:碓井光明『政府経費法精義』(信山社,2008年)250頁

政府経費法精義

政府経費法精義