窓口応対六十七点、電話応対六六・五点−。民間の調査会社が実施したつくば市職員の接遇調査結果がまとまった。「質問にはきちんと答えているが、あいさつができていない」との評価に、市原健一市長は「満足できる結果ではない」と渋い表情だ。
 市人事課によると、二〇〇五年に職員の接遇基準を設け、各職場の責任者に毎月、達成度を点数化した報告書を提出させている。自己評価はかなり良好なのに、市民から「ひどい応対だった」との苦情が届くため、第三者による調査が必要と判断した。
 調査は昨年十一月中旬から今年一月下旬にかけて実施。対象は窓口が百三十八部署、電話が百八十六部署で、消防本部や校務員一人の小中学校は除いた。覆面調査員が各部署であいさつ、言葉遣い、内容など二十項目を五段階評価。合計得点は最高が八十九点、最低は三十九点だった。窓口では、あいさつの三項目平均で「当たり前の応対」に満たない部署が半数近い六十五もあった。また、「市民の出入りが少ない部署では不審者を見るような視線」との酷評も。電話では、全体の印象を左右する締めくくりの際の態度に不満が感じられる部署が三分の一を占めた。
 市原市長は「私のいる場所から遠くなると評価が低くなっている傾向がある」と分散庁舎の弊害を指摘。来年五月の新庁舎開庁に向け、「『庁舎が新しくなっても、職員は代わり映えしない』と言われないよう管理監督に努める」と述べた。 (小沢伸介)

同記事では,つくば市において,民間調査会社が実施した接遇調査の結果がまとめられたことを紹介.
同市のいわゆる「集中改革プラン」内で,「市民満足度の向上」として,「職員の接遇向上を全庁的に推進する「スマイル・アップ運動」(つくば市職員接遇向上運動)を継続的に実施し,すべての職員の意識改革と更なる接遇向上」*1が,2005年度より実施されきた.同取り組みを受けて,2008年度の施政方針のなかで,「本年は,すべての部署における窓口応対や電話応対等の接遇状況を検証するため,外部調査を実施いたします.これにより,職員の意識改革が促進され,さらなる接遇マナーの向上につながることを期待しております.また,これらの結果を人事評価にも積極的に反映してまいりたいと考えております」*2と,外部調査の実施と,同調査結果の人事評価への反映が表明されたところ.同調査の結果が,同記事の通り.
調査を顕在的に行うことで,「仮構としての通常業務」となる可能性(いわゆる「ホーソン効果(Hawthorne effect)」)*3を回避することを想定し「覆面」で実施される同種の調査.2007年2〜3月に人口3万人以上の市区町村と都道府県対象に実施された内閣府に調査結果では,「住民視点での職員の接遇・応対の見直しを行うための情報を得る仕組み」としては,その実施状況としては,選択肢「その他」(計34.4)に含まれることが紹介*4されるのみで,余り多くはない模様.実施結果もまた「覆面」なのだろうか,散発的に実施結果が報道はされるものの*5,その実施割合(や実施結果の活用法)は,外部からの観察ではよく分からない.
同記事にもある自己評価と同種の調査との乖離については,自己評価の際に高値となる要因を考えてみると,職員の皆さんが「自信過剰(overconfidence)」でも「保有効果(endowment effect)」*6がその要因であることに限らず,単に,複数の接遇経験を相対的に評価する「自己評価」方式と,恐らく「一度切り(one shot)」(ではないかもしれませんが)の調査に基づき絶対的に評価される覆面調査との間で,評価対象の具体的対象個数が異なるために生じるのではないかとも考えられる.根本的な接遇上の支障となる要因を除去する対策ではなく,いわば「水戸黄門的」(または,「ウルトラマン的」)に,その時々に出会った支障事例を対処するうえでは,覆面調査結果の有用度は高いのかなあ,とも思わなくもない.ただ,同覆面調査結果が,上記の施政方針の通り,実際に人事評価に結びつくとなると,その評価内容の妥当性もまた検討が必要か.同市では,同調査結果をどのように利用されるのだろうか,要経過観察.

*1:つくば市HP(つくば市政市政情報行政改革実施計画(集中改革プラン))『つくば市行政改革大綱 自律都市を目指す都市経営の推進プログラム 実施計画(集中改革プラン)平成18〜21年度』(2006年5月)52頁

*2:つくば市HP(つくば市政市長の部屋施政方針 )『平成20年度市政運営の所信と主要施策の概要』(2006年5月)52頁

*3:岡田行正『アメリカ人事管理・人的資源管理史 新版』(同文舘出版,2008年)64頁,68頁

アメリカ人事管理・人的資源管理史

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*4:内閣府HP(自治体マネジメントに関するアンケート調査)『自治体マネジメントに関するアンケート調査 報告書』(株式会社 日本総合研究所,平成20年3月)95頁

*5:読売新聞(2009年1月7日付)「府の接客サービス、評価◎…覆面調査結果「目を見て受け答え」「台車貸してくれた」」,毎日新聞(2009年4月7日付)「おもてなしモニター制度:「おもてなし度」採点、制度開始−−宇都宮の推進委 /栃木

*6:マッテオ・モッテリーニ『経済は感情で動く』(紀伊国屋書店、2008年)53,203頁

経済は感情で動く : はじめての行動経済学

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