浜松市行財政改革推進審議会(行革審、会長・鈴木修スズキ会長兼社長)は10日、第2次としては最後の公開審議を同市中区の静岡文化芸術大で開き、行政区の廃止や議員定数の削減などに踏み込んだ「究極の行革」(鈴木会長)を求める意見書を鈴木康友市長に提出した。委員は8月で2年の任期を終え、行革審答申に沿った工程表の中身の審議について鈴木市長は「第3次行革審を早急に立ちあげたい」と述べた。
 意見書は▽行政区の廃止または削減▽議会の改革▽区協議会の充実―の3本柱。1年後をめどに考えを示すよう市側に求めている。
 政令市移行とともに導入したばかりの行政区については「見直せば職員を1000人近く減らせる」(鈴木会長)と分析。政令市に行政区の設置を義務づけている地方自治法の改正を国に要望するよう求めた。当面は7区を3区程度に削減する経過措置案も示した。少数精鋭で議会運営するため議員定数は削減し報酬は引き上げることを提案した。議会に独立した調査機関を設置するほか市全体の利益を考えてもらうため市内を一選挙区にする案も挙げた。行革審答申を受けて市が策定した工程表は公開審議の中で確認。中心市街地活性化事業では松菱跡地再生事業の枠組み再構築、幼保一元化事業では所管課の統一を進めるべき、などと指摘した。

同記事では,浜松市に設置された行財政改革推進審議会において最終の審議を行い,同市市長へ意見書を提出したことを紹介.,2008年7月31日付の本備忘録では基本構想の見直し,同年12月27日付では,地域自治区の廃止,2009年3月21日付では工程表に関して取りあげた同会における審議.今回にて,ひと先ずの「一区切り」の模様.同意見書については,同会HPを参照*1
同意見書では,「私たちは浜松市に行政区を設ける必然性はないと考えます」と明快に述べ,「人口80万人規模の浜松市に行政区を設けることは,かえって市の一体感を損な」(4頁)う,として,「本庁・区役所・市民サービスセンターの3層構造は,市内部の管理的仕事を増やし事務の執行を非効率にしています」(同頁)との現状認識が示されている.そして,現在では,「必ず指定都市の全域を画して区を設け,そこに区の事務所を設置しなければならない」*2と解される,「行政区の必置制度を廃止し」(同意見書5頁),「政令指定都市の意思で行政区設置を決められるよう,国に地方自治法の改正を要望すべき」(同頁)との制度提案がなされている.恐らく同改正については,例えば,地方自治法第252条の20第1項の規定を,「置くものとする」から「置くことができる」とした場合には,あわせて,公職選挙法第15条第6項に基づく議会議員選挙における選挙区についての,「但し」書き以下は「削除」が必要になるとも考えられる.そのため,同意見書では,「人口100万人を超えるまでは各都市の意思で一市一選挙区など行政区と異なる選挙区を設置することができるよう,国に公職選挙法の改正を要望していただきたい」(9頁)として,「一市一選挙区」の「提言」(同頁)をも行っている.なるほど.
しかし,「行政区存廃について,市民の意思確認と国の制度改正実現には時間を要すると思われ」るとの見解からも,まずは,同市で対応できる方策として,「現在の7つの行政区の削減を提言」(4−5頁)が示されている.このように「合区」を提案する目的としては,政令指定都市への移行以前には,「人口60万人にひとつの市役所で足りていた旧浜松市民を,区役所を新設してまで5つの区に分ける必要があったのでしょうか」(5頁)という根源的な問いに基づくものであり,更には,「試算では7区を3区に統合すれば,現在の市民サービスを確保しつつも300 人に相当する窓口業務や間接業務が集約」可能として,「人件費に換算すれば1年で24億円,10年では240億円」「維持管理費の減少等への波及を含めれば,さらなる効果が見込」れるとする.その結果,「市街地・郊外地・中山間地域にわかれる浜松市の都市像からは,7区は市域が細分化されすぎており3区程度が望ましい」(同頁)とする.
財政赤字」への危惧と「民政赤字(democratic deficit)」*3の解消は,かくも難しい課題と,非常に刺激を受ける意見書.

*1:浜松市HP(浜松市行財政改革推進審議会浜松市行財政改革推進審議会 提言・答申等)『意見書(「行政区の廃止または削減」「議会の改革」「区協議会の充実」について)』(平成21年7月10日)

*2:松本英昭『新版 逐条地方自治法第5次改訂版』(学陽書房,2009年)1248頁

新版 逐条地方自治法

新版 逐条地方自治法

*3:金井利之「大都市自治体制度と「民政赤字」」『ガバナンス』No.97,2009年5月,27-28頁

ガバナンス2009年5月号

ガバナンス2009年5月号