県議会は、公共政策大学院や法科大学院の学生のインターンシップ(就業体験)を行うことを決めた。都道府県議会では全国初の試み。試行として9月に2週間、京都大公共政策大学院の学生2人を受け入れる。
 三谷哲央議長が3日の定例会見で明らかにし、「学生の新しい感性、意見が入ることで、議会の政策立案の充実にもつながる」と説明。試行の結果を見て、受け入れる時期や期間、人数、募集方法などを検討し、来年の春休みから本格実施したい考えを示した。実習内容は議員提出議案に関する調査や資料案の作成など。交通費や滞在費などの経費は学生や大学院が負担する。学生が実習中に知った秘密は部外者に漏らしてはならないとし、論文などで発表する場合は事前に議会の承認を得るよう求める。(平井一敏)

同記事では,三重県議会において,2名の大学院生をインターンシップとして受け入れる予定であることを紹介.2009年7月31日付の本備忘録でも記した,この夏の3つの「宿題」の一つが,同記事でも紹介されている,地方議会における議会事務局.
1970年代よりも「一昔前まで」の「議会局職員」の執務風景に対する回顧的観察記録からは,同職員は「議員の小使い同様だった.視察旅行へ行く時は,弁当からお茶の手配までしなければならない.駅で弁当を買っているうちに汽車が出てしまったので,次からは弁当を買うため職員が先行した,というような話がいくらでもある.議員にあたりまえのことを言っただけなのに,“逆鱗”に触れ,左遷された職員も過去にいた」として,「神経は他局職員の何倍も使う局である」*1とも記録されている,議会事務局の職員.また,「議会には,前例,慣例がつきもの」(157頁)として,「それも,書いて残しておくことよりも,頭で覚えている事の方が多い」(158頁)ため,「必然的に職員の役割は重要」となり,「他局よりも古い職員が多くなるのが特徴」(同頁)とも観察されてもおり,「専門家集団がその職業を遂行するにあたって独占的に持っている知識」とされる「現場知」*2が重きを置く場ともいえそう.
このような経験的な観察結果に対しては,東京都における議会局における1990年代後半の「議会事務局の職員在職期間」を分析した論攷では,「全国の都道府県議会会事務局の平均で5.1年」とあり,「都議会事務局の平均在職年数は11.2年である」なかでは,「全国平均の2倍の長さ」があることを明示し,「都議会局の職員が「議会の職員」としての帰属意識を持ちやすい配慮がなされている」*3との分析もある.この点については,上記の「宿題」のなかで,もう少し長期にわたり,更には首長部局との対比のなかで観察,分析をすることが,現在のところの構想(いえ,妄想).
2009年8月4日付の読売新聞による報道では,同インターンシップのお二人は,「月2回のペースで開かれている「議員提出条例に係る検証検討会」などに関する調査,資料案の作成,議員との打ち合わせなどに参加する予定」*4とのこと.同検討会については,同県議会HPを参照*5.果たして「現場知」の世界のなかで,大学院において「専門知」を学ばれているお二人が,2週間という期間で,どのような体験をされるのか,同記事ではその体験内容は部外秘とはいえ,是非とも観察記録を拝読してみたい.

*1:神谷紀一郎『都庁』 (教育社,1974年)157頁

都庁 (1974年) (教育社新書―行政機構シリーズ 19)

都庁 (1974年) (教育社新書―行政機構シリーズ 19)

*2:河野勝「政策・政治システムと「専門知」」久米郁男編『専門知と政治』(早稲田大学出版部,2009年)19頁

専門知と政治 (早稲田大学現代政治経済研究所研究叢書 34)

専門知と政治 (早稲田大学現代政治経済研究所研究叢書 34)

*3:鍛谷智也「地方議会の実態と課題 東京都議会を事例として」東京市政調査会編『分権改革の新展開に向けて』(日本評論社,2002年)337頁

分権改革の新展開に向けて

分権改革の新展開に向けて

*4:読売新聞(2009年8月4日付)「全国初県議会に実習生

*5:三重県HP(三重県議会県議会の活動検討会等)「議員提出条例に係る検証検討会