佐賀市は、近隣に生鮮食料品など生活必需品をそろえる商店がない地域の実態調査を始めた。同市では郊外に大型商業施設が相次いで出店し、中心市街地の衰退が進んでいるが、移動手段が限られる高齢者に買い物の不自由な“買い物難民”が増える恐れもあり、市は来年度までに対応策をまとめる方針だ。
 計画によると、居住地から半径500メートル以内などを基準に商店の空白地帯を把握。住民からは需要を聞き取り、空き店舗などを活用した店舗開設や移動販売などの改善策を検討するという。調査対象は、主に「環状線」と呼ばれる幹線道路に囲まれた区域。自治会などの協力も得て、地域コミュニティーの再生や生活者の利便性向上なども含めて協議する。全国的に市中心部の衰退が著しいことから、同様の取り組みが進んでいる他市が実施している対策も参考にする。
 市中心部では高齢者が増加傾向にあるといい、市商業振興課は「現状では何とか生活を維持できているが、より高齢化が進めば状況は変わる可能性がある。生活の実態を把握して改善につなげたい」としている。

同記事では,佐賀市において,いわゆる「買い物難民」の状況に関する実態調査を開始したことを紹介.「買い物難民」の現状については,2009年6月2日から同年同月12日迄の8回にわたる読売新聞による連載企画記事を通じて,各自治体における動向とその対策の一部を知ることが可能*1
2005年に策定された同市の中心市街地活性化計画は,「地域社会に対する「社会的責任」」を示しつつ,「「コンパクトシティ佐賀」の実現」という考え方や,「中心市街地活性化の目標を具体的な数値で示し」,「立派なできあがり」*2として,当時,紹介されたこともある計画.その後,同計画の根拠法である中心市街地活性化法は,「都市の様々な郊外化・拡散化が進んでいて,それと裏腹に中心市街地の空洞化現象が見られて,さまざまな問題が出ているからではないか,今後の人口減少・超高齢化社会を考えると,都市機能をうまく集約させるような都市構造が望ましいのではないか,という判断」*3等のから,2006年に改正されており,同市においても同改正を受けて同計画は改定されている.同計画については,同市HPを参照*4
改定された同計画の前提条件ともいえる「中心市街地活性化の考え方」(1頁)の箇所は,同記事との対比の中で拝読すると,考えさせられる.つまり,「既存の商業振興策の限界」としては,「昨今の生活のなかでは,基礎的なニーズは郊外のショッピングセンタや近くのコンビニエンスストアーで賄い,高度なニーズは他地域へという生活の実態」があり,そのため「中心市街地が衰退しても地域住民が困らないという現状」(1頁)もあったと指摘する.同計画内でこれらの前提条件を踏まえて,「住む人を増やす」「来る人を増やす」(16頁)ことを中心市街地の「街づくり基本方針」と置き,「街なか居住の支援」「職住一体化の推進」「安心して暮らせるための環境整備」(17頁)や,「公的施設などを中心市街地に集約」「企業誘致」「事務所の誘致」「病院の誘致」「教育施設を誘致」「NPO活動の拠点・インキュベート施設の整備」「佐賀大学との連携」(18頁)等が示されている.
ただ,これらの施策も,いわば郊外と中心地域と間での住民移動(方策及び可能性)が確保されていることが前提条件ともいえる.ただ,「都市部の高齢化の進展」*5がもたらす効果は輻輳的でもあり,同調査の結果次第では,そのため中心市街地に居を置くことだけではなく,日々の生活として住むことができるようへと,「中心市街地が衰退しても地域住民が困らないという現状」(1頁)という前提条件から再考がされるのだろうか.要観察.

*1:読売新聞(2009年6月2日〜同年同月12日)「買い物難民

*2:矢作弘『大型店とまちづくり』(岩波書店,2005年)165頁

大型店とまちづくり―規制進むアメリカ,模索する日本 (岩波新書 新赤版 (960))

大型店とまちづくり―規制進むアメリカ,模索する日本 (岩波新書 新赤版 (960))

*3:澁谷浩一「都市再生と中心市街地活性化の施策」首都大学東京・都市教養学部都市政策コース監修『都市の活性化とまちづくり:制度設計から現場まで』(公人の友社,2009年)21頁

*4:佐賀市HP(くらし・環境:まちづくり街づくり)「佐賀市中心市街地活性化基本計画

*5:森田朗自治体における課題解決と政策法務の役割」『ジュリスト』No.1382,2009.7.15,83頁

Jurist(ジュリスト)1382

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