蒲島郁夫知事は20日の定例会見で、高額で業務実態に見合っていないとの批判のある県行政委員の報酬について、現行の月額制を勤務日数に応じた日額制に見直し、来年度から実施する方針を明らかにした。人事課に対し既に具体策の検討を指示した。
 知事は「県民の関心も高く、全国知事会行政改革プロジェクトチーム(行革PT)でも議論することになった。動きが出るということは、何らかの問題点があるということ。考える時期ではないかと判断した」と見直し理由を説明。ただ、「一律日額制になるとは現段階では言えない」とも補足した。
 見直し対象は、教育、人事など9委員会の委員と監査委員の計75人で、いずれも県の非常勤特別職。委員会ごとに委員や事務局の意見なども踏まえて見直しを検討。日額制が適当と判断した場合、単価水準や報酬を支給する業務の範囲などを決め、来年2月定例県議会に報酬条例の改正案を提出する。
 行政委員の報酬をめぐっては、くまもと・市民オンブズマンが10月、定例会議1回当たり1人平均で数万〜十数万円に上ったり、会議欠席でも報酬が支払われたりしていた実態を指摘。勤務日数に応じ支給するとした地方自治法の趣旨に反するとして住民監査請求。全国知事会行革PTも11月12日から議論をスタートさせた。(亀井宏二)

松沢成文知事は24日、教育委員など県の行政委員が受け取っている月額報酬について、一部を除き、勤務日数に応じた日額制に来年4月から変更する条例改正案を2月議会に提出する方針を明らかにした。大半の行政委員の報酬を日額制にするのは全国の都道府県で初めて。県特別職報酬審議会(会長・柴田悟一横浜商科大学教授)から同日提出された報告書の内容を受け、定例会見で表明した。
 松沢知事は「現状では原則日額制とする地方自治法の趣旨に反しているのが実態。県の財政状況も厳しい中で、人件費の削減にもつながる」と説明。審議会の報告によると、年間の平均勤務日数は最も多かったのが公安委員長の108日で、最も少なかったのは内水面漁場管理委員会委員の14日だった。
 審議会は9つの行政委員会のうち、「自己活動への制約が非常に大きい」との理由で有識者で非常勤の監査委員(1人)、「勤務日数が多く、職責が非常に重い」として公安委員会委員(5人)を月額制にできると判断。それ以外の教育委員会選挙管理委員会、人事委員会、労働委員会、収容委員会、海区漁業調整委員会内水面漁場管理委員会、県議会議員の監査委員の計67人は原則日額制にすべきだとした。
 対象の行政委員を月額制から日額制に改めることで支給額は年間約3割減少する見込みだ。県によると、富山や福井県などでは内水面漁場管理委員会など一部の行政委員について日額制にしているが、大半を日額制にするのは全国の都道府県で初めてという。松沢知事は「報告は私の考え方に近いものだった。神奈川の改革が先導役となって全国に広がると期待している」と述べた。
 行政委員の報酬をめぐっては、滋賀県の行政委員への公金差し止め訴訟で、大津地裁が今年1月に月額報酬は違法との判決を下し、同県が不服として控訴している。

両記事では,熊本県と神奈川県において,行政委員会の委員報酬の「日額制」への移行を検討していることを紹介.2009年1月23日付の本備忘録にて紹介した,行政委員会委員報酬の「月額制」へ違憲判決を受けての,同年2月12日付及び同年8月23日付の両本備忘録で言及した報酬制度の「見直し」方針の「政策波及(policy diffusion)」*1事例.更に,広がるのだろうか.要観察.
第二記事である,神奈川県における特別職報酬審議会の報告書の内容に関しては,2009年2月28日付の本備忘録にて紹介した,同県知事による「課題設定(agenda setting)」通りの内容に至った模様.第一記事では,「人事課に対し既に具体策の検討を指示」とあり,同県に設置されている「熊本県特別職報酬等審議会」への意見聴取が行われないものなのかと思い,同審議会設置条例を拝読すると,同条例第2条において「議会の議員の議員報酬の額並びに知事及び副知事の給料の額に関する条例を議会に提出しようとするときは,あらかじめ,当該議員報酬等の額について審議会の意見を聴くもの」*2と知事による同審議会への諮問手続が規定されており,行政委員会委員の報酬に関しては言及されていない.では,諮問を受けた神奈川県の「神奈川県特別職報酬等審議会規則」を拝読すると,同規則第2条においても,同審議会の「所掌事項」としては,「審議会は、議会の議員の議員報酬の額並びに知事及び副知事の給料の額につき知事の諮問に応じて調査審議し,その結果を報告し,又は意見を建議するものとする」*3と規定されており,その審議対象は,同県もまた議会の議員,知事,副知事に限定されている模様.
考えてみれば,まさに「執行機関の多元主義」であり,行政委員会委員報酬に関して,同県では,同審議会に諮問された理由は,「自治体では職員集団の一体性が強い」*4特性の一つからと整理することが適当なのだろうか.考えてみると,うまく整理ができない(なお,行政委員会委員のみならず,2009年4月7日付の本備忘録でも紹介した矢祭町の取組のように,議会議員の報酬のみならず,首長・副首長に関しても,実際上は「給与抑制条例」*5により「給与の抑制」が図られてはいるものの,その定式化次第では,同様の運用を求めるような疑問が生じる蓋然性もあるのだろうか.要確認).

*1:伊藤修一郎『自治体政策過程の動態』(慶応義塾大学出版会,2002年)37頁

自治体政策過程の動態―政策イノベーションと波及

自治体政策過程の動態―政策イノベーションと波及

*2:熊本県HP(県庁の組織で探す私学文書課熊本県例規集(平成21年7月3日現在)熊本県例規データベース)「熊本県特別職報酬等審議会条例」(昭和39年10月13日,条例第74号)

*3:神奈川県HP(法規データ提供サービス)「神奈川県特別職報酬等審議会規則」(昭和42年12月26日,規則第101号

*4:礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『ホーンブック地方自治』(北樹出版,2007年)201頁

ホーンブック 地方自治

ホーンブック 地方自治

*5:碓井光明『政府経費法精義』(信山社,2008年)149頁

政府経費法精義

政府経費法精義