鳩山政権が掲げる「地域主権改革」の柱の一つとなる「国と地方の協議の場」の政府案が明らかになった。官房長官を議長に、主要閣僚と全国知事会など地方6団体の代表で構成。国と地方の役割分担や自治体の行財政・税制に関する重要事項を協議する。自治体側に会議開催の請求権を認めるなど、政府への陳情の場を超えて双方が対等に話し合う場とした。
 政府案は28日に、自治体代表との会合で示される。自治体側の要望とすりあわせたうえで、内閣は3月に関連法案を国会に提出する方針だ。会議は「地域主権改革の推進」を目的に掲げる。いまは総務相が兼ねている地域主権推進担当相と自治体代表の1人が副議長を務める。自治体側は首相を議長とするよう求めているが、「首相に相当する全自治体の代表者はいない」との理由で、首相は正式メンバーとはしていない。
 全構成員が参加する会議のほか、社会保障などテーマ別の分科会も必要に応じて設置する。自治体側が「全額国費負担」を主張する2011年度以降の子ども手当の制度設計や、全自治体の歳出入総計の見積もりである地方財政計画も協議の対象に含まれる見通しだ。協議で決まった内容については、政府側も地方側も尊重義務が課せられる。
 これまでも政府と自治体の協議は開かれていたが、法的位置づけはなく、単なる意見交換やガス抜きの場に過ぎなかった。鳩山政権は権限・財源の移譲などを進めていく方針で、新しい「協議の場」はこうした改革を国と地方が話し合いながら進めるための主舞台となる。(伊東和貴)

鳩山政権が公約に掲げる「国と地方の協議の場」を設置するため、政府と全国知事会など地方6団体による実務検討グループの会合が28日、首相官邸で開かれた。政府側は、国と地方の双方が協議の招集を求められることなどを柱とする制度の骨子案を示した。
 政府は地方側と調整した上で、3月に法案の国会提出を目指す。骨子案では、協議の場は議長を務める官房長官のほか総務相財務相ら関係閣僚と地方6団体代表で構成。地方行財政や社会資本整備など、地方に大きな影響を及ぼす分野を協議対象とした。
 また、首相については「メンバーにすると時間が取れず実質協議にならない」(松井孝治官房副長官)として外している。これに対し、地方側は「逃げられている感じがしてかえってマイナスだ」(山田啓二京都府知事)などとして首相を議長にするよう要求。引き続き調整することになった。

第1記事では,いわゆる「国と地方の協議の場」の法制化に向けた「政府案」について,第2記事では,2009年12月19日付の本備忘録にて紹介した「国と地方の協議の場実務検討グループ」の第2回開催状況を紹介.
第1記事でも紹介されている「政府案」のうち,その構成員として首相を含まないとの提案に対しては,同案に対して,2010年1月28日付の京都新聞では「わが国始まって以来、初めて国と地方が協議する場に総理の姿が無いのは画竜点睛を欠く.かえってマイナスだ」*1,2010年1月28日付の毎日新聞では「国と地方はこれで対等平等なのか」*2との意見が示されたことを報道.
第2記事では「引き続き調整することになった」との結論に至ったことが報道されてはいるものの,2010年1月29日付の日本経済新聞では「結局,首相は会議に出席するとし,位置づけなどは今後協議することで大筋合意した」*3ともおり,今後の調整及び協議案件が,「首相」の「出席」を含めた構成員についてであるか,又は,同場の「位置付け」に関してではあるか,各紙の報道では,正確には把握できず.更に,検討グループHP*4では,同回の提出資料及び議事概要は現在までにはところ,公開されておらず確認ができず.公開後,要確認.
2009年12月19日付の本備忘録以降,2009年12月25日には指定都市市長会からは「「国と地方の協議の場」の法制化については,指定都市や中核市特例市といった一般市とは異なる権能と規模を持つ市が抱える課題や果たすべき役割が多様であることを反映させることが大切」との認識から,「「国と地方の協議の場」には,自治体それぞれの意見が直接反映されるよう,常設の地方側議員として指定都市の代表を含め,都道府県や市町村のそれぞれの複数の代表が参加しなければならない」*5との提案も示されており,「地方」側の構成員のあり方に関しても「多様」であり「複数」であることが求められている.方や,第1記事で紹介された「政府案」では,「地方」側の構成員としては「地方6団体の代表」と規定されてはいるものの,その場合には,国と地方の協議の場という「ミニ・パブリックスにおける熟議参加者たち自身が,熟議を経た意見を多数者のそれと見なして受け入れる次元」*6とともに,「「ミニ・パブリックスにおける熟議による多数者の構成」を「正統な多数者の構成」として位置づけるような言説の提示と,その社会的浸透が必要となる」*7とすれば,やはり,その構成員に関しては「国」側のみならず,「地方」側にとっても,「もう一つの課題」*8とも考えられそうか.今後の検討状況も,要経過観察.
【追記:2010年1月30日】
上記備忘録記入後,国と地方の協議の場実務検討グループの第2回の配布資料が公開*9
会議時間は,前回と同様1時間.同回では,前回,「地方」側から提示された「国・地方会議(仮称)法案要綱」に対する「考え方」*10が提示されている.
第1記事,第2記事で取りあげられた構成以外では,まず,「対象事項」に関しては,「提案のように詳細に対象事項を定めて,協議の義務付けを行うことは,協議事項が形式的に広がりすぎて,国と地方の代表者による実質的な協議が行えなくなる可能性」があり,そのため「かえって対象事項の枠を縛る結果となる」ことから「法令では協議の義務付けを行わないで,包括的に対象となる範囲を定めることが適当」*11との判断が示されている.次いで,「会議決定のプロセスと拘束力」については,「必要があるときには臨時に開催」とある.また,その「拘束力」に関しては,「議員全員が了解した事項は別途政令で定める方法で議決を可能とすること」に対して,「協議の場が基本的に互いに知恵を出し合う場であり多数決にはなじまないものである」との判断から,「具体的な決定手続は法令では規定せず,合意(コンセンサス)によることとすることが適当」*12との見解が示される.また,「再議」に関しても,「当事者のみが参加している対等な協議において,「再議」を区別して取り扱う必要性もない」として,「法令上の定めはおかず,「再議」は議員の発案により行うことが適当」*13ともされる.最後に,「会議の結果の取扱い」は,「協議が調わなかった事項についての国会への意見書の提出」に関しては,「当該事項に係る議案の国会における審議に資するよう,政府が国会に報告することとすることが適当」とする.更に「第三者が仲裁を行う規定を設けることは,なじまない」*14ともある.これらの見解をもとに,政府案としての骨子案*15として取りまとめられている.なお,同骨子案内で,「6.その他」として,「(1)運営経費は,国及び地方六団体の負担とする.」*16とあることは,興味深い.
「地方」側からは,「当日地方側配布資料」として,上記骨子への「意見」*17が提示.「実質的な協議の確保のためには,分科会(議)の活用をあらためて提案」されており,更に,「大都市制度の検討に当たっては,関係する地方公共団体を代表する長及び議長を臨時議員として選任するとともに,分科会の一つとして大都市制度に関する分科会を設置することの確認を求める」*18との提案もなされている.同分科会設置の提案を通じて,上記の備忘録においても参照した「指定都市市長会提案」を包摂されることになるのだろうか.要確認.

*1:京都新聞(2010年1月28日付)「「国と地方の協議の場」の政府案提示 法制化に向けた実務者会合

*2:毎日新聞(2010年1月28日付)「鳩山内閣:「協議の場」設置法案に地方側反発

*3:日本経済新聞(2010年1月29日付)「国と地方の協議、首相も参加へ 自治体首長の拒否権は触れず

*4:内閣府HP(地域主権)「国と地方の協議の場実務検討グループ

*5:指定都市市長会HP(指定都市市長会の主張「国と地方の協議の場」の基本的なあり方にかかる指定都市市長会提案等)「「国と地方の協議の場」の基本的なあり方にかかる指定都市市長会提案」(指定都市市長会,平成21年12月25日)

*6:田村哲樹「熟議による構成,熟議の構成」小野耕二編著『構成主義的政治理論と比較政治』(ミネルヴァ書房,2009年)118頁

構成主義的政治理論と比較政治 (MINERVA比較政治学叢書)

構成主義的政治理論と比較政治 (MINERVA比較政治学叢書)

*7:前掲注6・田村哲樹2009年:119頁

*8:松井望「国と地方の協議の場」のもう一つの課題京都府HP(府政運営・方針京都府の地方分権改革)『京都府分権メルマガ「縦横無尽」』(第14号・2009年9月号)

*9:内閣府HP(地域主権:「国と地方の協議の場実務検討グループ)「国と地方の協議の場実務検討グループ 第2回会合:開催日平成22年1月28日(木)

*10:内閣府HP(地域主権:「国と地方の協議の場実務検討グループ第2回(開催日平成22年1月28日))「資料1地方側提案に対する考え方

*11:前掲注10・内閣府(第2回・資料1)1頁

*12:前掲注10・内閣府(第2回・資料1)1頁,2頁

*13:前掲注10・内閣府(第2回・資料1)2頁

*14:前掲注10・内閣府(第2回・資料1)2頁

*15:内閣府HP(地域主権:「国と地方の協議の場実務検討グループ第2回(開催日平成22年1月28日))「資料2「国と地方の協議の場」に関する制度案の骨子(案)

*16:前掲注15・内閣府(第2回・資料2)

*17:内閣府HP(地域主権:「国と地方の協議の場実務検討グループ第2回(開催日平成22年1月28日))「「国と地方の協議の場」に関する制度案の骨子(案)についての地方側意見

*18:前掲注16・内閣府(第2回・制度案の骨子(案)についての地方側意見])1頁,2頁