県は28日、県職員の異動で初めて導入する課長級昇任試験を9月中旬から始めると発表した。試験は面接を重視し、何度でも挑戦が可能。中村知事は松山市長時代、同様の試験を市職員人事に採用した経験を持ち、「昇任後の仕事ぶり次第では逆転人事もありうる。意欲や能力の高い職員を登用したい」と話している。
 これまでの課長昇進は、部長など所属長による考課などで判断。現在の最年少課長は51歳だが、若返りを図るため、受験資格の在職年数を松山市より1年短縮した。対象は、課長補佐級ポストに2年以上在職する約400人(医師や教員、警官を除く)。論文試験などで絞り込んだ70〜80人を目安に面接を行う。面接は知事や副知事ら特別職と総務部長の計6人が担当。業務把握能力や組織の管理運営能力などを評価する。来年度の課長級昇任は今年度の53人を若干上回る見通しという。

本記事では,愛媛県における課長級昇任試験制度の導入方針を紹介.現在実施されている「東京都」「神奈川県,長崎県」,そして「今年度から導入する予定」である「大阪府*1に続く,同制度の導入.同県の同制度に関しては,同県HPを参照*2.下名の主たる観察対象の一つでもある同制度.今後もその導入の広がりは,比較観察の可能性も高めることとなり,下名個人的にはたいへんうれしい限り.
同制度は,「組織の活性化」を企図し,「意欲,能力のある職員の積極的な登用を図る」*3ことを目的に導入.「医師,県立病院医療職,教員,警察官の職を除く」「課長級ポストへの任用を希望する課長補佐級の職員」であり,「課長補佐級の在職年数が2年以上」であることが受験要件.現在の同県の「昇任」では「昇任試験はなく,勤務評定に基づく選考」により実施.「主事−主任−係長・専門員−課長補佐−課長−局長−部長という職制」で,概ねの「昇任年齢」は「主任がおおよそ30〜31歳」「係長が早い人で38歳くらい」「課長補佐は早い人で47歳」*4であるとも記録されている.本記事でも紹介されているように,「約400名」がいる「課長補佐級の職員」の年齢は概ね49歳以上となるのだろうか.要確認.
「試験の内容」は,「課題に対する論文試験」と「特別職等による個別面接」を実施.「論文試験」では「基礎的な,ベースとなる識見,思考力,表現力,知識や能力等を見るためのテーマ」*5が想定.また,「個別試験」では,「一人20分くらいが目安」とされ,「知事含め6人」による「6対1で実施」*6.「専門分野には深く,全体には浅くという知識を持っているのかどうか」「鳥瞰図的に物事を見ているかどうか」,そして,「与えられたユニット,チーム」への「管理運営の考え方」*7などが一つの面接時の基準ともされる.あわせて「直近2期の人事考課を評価対象」ともされる.これにより,日々の「一所の執務空間」*8の中での「働きぶりを見る目線」*9も加えられている.ただ,論文試験と個別試験の間では,「論文試験の受験者が多数に及ぶ場合」には,「論文試験の結果と業績等の評価を踏まえ」た「受験者の選抜」の実施後,「口述試験*10が行うこともあるとされる.「合格者数」は「退職,昇任等による要補充数」とされており,その数はまずは「退職者数という要因に左右される」*11こととなる.
しばしば,「相場が立つ」*12なかで行われてきたとも観察されてきた自治体の人事管理.とはいえ,その「相場」,「朧けに共有されてきた予測可能性」のなかでの「固定相場的な人事政策」*13となり,「自律的な官僚制」*14を確保されてきたとも解せなくもない.果たして,同制度の導入を通じて「変動相場的な人事政策」*15へと移行されることになるか,今後の同県の同制度の運用は,要経過観察.

*1:愛媛県HP(報道発表資料)「課長級昇任候補者選考試験に関する記者発表の要旨について(人事課,2011年7月29日)

*2:愛媛県HP(報道発表資料課長級昇任候補者選考試験に関する記者発表の要旨について(人事課,2011年7月29日))「課長級昇任候補者選考試験の実施について」(H23.7.28,人事課)

*3:前掲注2・愛媛県(課長級昇任候補者選考試験の実施について)

*4:愛媛県HP(平成23年度県職員採用情報職員のあれこれ)「昇任システム

*5:前掲注1・愛媛県(課長級昇任候補者選考試験に関する記者発表の要旨について(人事課,2011年7月29日))

*6:前掲注1・愛媛県(課長級昇任候補者選考試験に関する記者発表の要旨について(人事課,2011年7月29日))

*7:前掲注1・愛媛県(課長級昇任候補者選考試験に関する記者発表の要旨について(人事課,2011年7月29日))

*8:大森彌『官のシステム』(東京大学出版会,2006年)73頁

官のシステム (行政学叢書)

官のシステム (行政学叢書)

*9:中村圭介『実践!自治体の人事評価』(ぎょうせい,2007年)20頁

実践!自治体の人事評価―「評価される側」からのアプローチ

実践!自治体の人事評価―「評価される側」からのアプローチ

*10:前掲注2・愛媛県(課長級昇任候補者選考試験の実施について)

*11:松井望「石原都政下の組織編成と人事政策」『都市問題』Vol.102,2011年6月,88頁

*12:前掲注8・大森彌2006年:74頁

*13:前掲注11・松井望2011年:90頁

*14:菅原和行『アメリカ都市政治と官僚制』(慶応義塾大学出版会,2010年)121頁

アメリカ都市政治と官僚制―公務員制度改革の政治過程

アメリカ都市政治と官僚制―公務員制度改革の政治過程

*15:前掲注11・松井望2011年:90頁