政府は18日午前の閣議で、2012年4月1日の熊本市政令指定都市移行を決定した。川端達夫総務相が省内で開いた閣議後の会見で、関係政令の改正決定を報告した。政令は21日に公布される。国が合併特例法の下で政令市の「人口要件」を70万人程度に緩和して以降、7市目の移行で、九州で3番目、全国20番目の政令市となる。
 同総務相は「熊本市は自然の中にある地域と、人口集中部を持つ日本の縮図のような都市。その特色を生かした政令市のモデルとして努力してほしい」と期待感を示した。国は市町村合併を促す合併特例法の下で、100万人以上だった政令市の「人口要件」を2001年以降、弾力運用。05年に人口約70万人で政令市になった静岡市を事実上の基準に、その後、新潟など5市が移行を実現させた。総務省によると、弾力運用は10年3月末で終了、緩和措置に基づく政令市は熊本市が最後となる。
 熊本市は02年4月、庁内に広域行政班を設けて政令市に向けた取り組みを本格始動。近隣自治体との合併協議に難航しながらも、08年10月に旧富合町、10年3月に旧城南、植木の2町との合併にこぎつけ、弾力運用の期限切れ直前に「人口要件」をクリアした。中核市の同市は、県並みの権限を持つ政令市に移行することで行財政基盤を拡充。九州における拠点性向上などの効果を期待している。
 蒲島郁夫知事から電話で閣議決定の連絡を受けた幸山政史市長は、市役所1階に来年4月の移行が決まったことを知らせるボードを津田征士郎市議会議長とともに設置。幸山市長は「いろいろなことがあったが、ようやくたどり着いた。喜びと感謝の気持ちでいっぱい。本当にうれしい」と述べた。(前田克、横山千尋

本記事では,熊本市に対して,2012年4月1日に政令指定都市へ移行することを,2011年11月18日の閣議において決定されたことを紹介.
2011年10月6日付の本備忘録にて記録した日程通りでの閣議決定.そこで,同日付の「官房長官の記者会見等」を拝見させて頂くと「本日の閣議は,一般案件等3件と,政令,人事が決定されました」*1と,同市に関しての言及は無く,その手続的な報告のみ(寂しい限りです).
次いで,「総務大臣閣議後記者会見」を拝読.同相からは,同日の閣議にて「豊中市中核市として指定する政令が決定」されたこととあわせて報告(豊中市中核市への移行に関しては,2011年10月18日付の日本経済新聞*2での報道に留まり,こちらも寂し限りです),同市を「人口の集中部と,割に山間部と,いろいろな,バラエティのある部分の都市でありますので,その特色を生かした政令市としての一つのモデル」との認識を示されつつ,あわせて,政令指定都市制度に関しては,同制度への移行要件を「今後は元に戻って100万人をベースとするということが,運用されるというふうに考えています」*3との考えも言及.
上記本備忘録でも記録した,211年8月30日付の前・総務相による記者会見では,「政令指定都市の指定というのは,これは法律と政令に根拠があって,その要件にかなっていれば指定するということですから,どこかで打ち止めということでは,理論的にはない」*4とは,原理的には整理されてはいたものの,実態的には「100万人をベース」とする市が皆無のため,当分の間,同制度へと移行する都市は現れなくなる.
2011年8月30日付の前・総務相による記者会見でも「知事が積極的に政令指定都市化を旗を振るというのは,余り聞いたことがなかった」*5との認識からは,「大都市と府県の間に,いたずらに険悪な対立・抗争」*6が生じることなく移行された事例としても整理ができそうな同市の政令指定都市への移行.果たして,移行後には,「これまでいくつも指摘されてきた」「大都市制度をめぐる諸問題」とされる「道府県との関係性」「大都市住民」との「関係性」,「圏域との関係性」*7からの課題を「県との連携」*8のなかで解決されていくことになるか,同市の政令指定都市制度としての運用もまた,要観察.

*1:首相官邸HP(官房長官記者発表平成23年10月)「平成23年10月18日(火)午前

*2:日本経済新聞(2011年10月18日付)「熊本市が20番目の政令市に 来年4月

*3:総務省HP(広報・報道大臣会見・発言等:2011年9月)「川端総務大臣閣議後記者会見の概要(平成23年10月18日)

*4:総務省HP(広報・報道大臣会見・発言等)「片山総務大臣辞表取りまとめ閣議後記者会見の概要(平成23年8月30日)

*5:前傾注4・総務省(片山総務大臣辞表取りまとめ閣議後記者会見の概要(平成23年8月30日))

*6:西尾勝地方自治制度の大都市特例」有馬朗人・著者代表『都市』(東京大学出版会,1991年)238頁

都市 (東京大学公開講座)

都市 (東京大学公開講座)

*7:松井望「大都市制度をめぐる諸問題‐「二重行政」という問題とその解‐」『都市とガバナンス』vol.16,2011年9月,36頁

都市とガバナンス 第16号

都市とガバナンス 第16号

*8:前傾注3・総務省(川端総務大臣閣議後記者会見の概要(平成23年10月18日))