鳥取市は、高齢者らが路線バスを乗り降りする際に介助をしたり、乗り換えの案内をしたりする「バスアテンダント」の導入に向けた実証実験を10月から1年間、同市南部にある河原、用瀬、佐治の3町で行う。少子化の影響などにより、バスで通学する高校生らの利用が今後も頭打ちになると予想されることから、高齢者らへのサービスを充実させて利用客を呼び込むのが狙い。市によると、観光用にバスアテンダントを配置する例は松江市などであるが、高齢者らへのサービス向上のために停留所に配置するのは全国でも珍しいという。(伊藤晋一郎)
 市内や県東部を巡る路線バスは現在、民間の2社が運行しており、市や県東部の自治体などが補助金を出している。市によると、年間利用客は1998年に約587万人だったのが、2008年には327万人、09年は284万人と300万人を割り込み、10年には272万人と年々減少。特に市南部では、年間1億円の赤字運行に陥っている。このまま利用客減が続けば、減便や路線廃止が避けられなくなるという。
 バスアテンダントは、JR鳥取駅から市南部の河原、用瀬、佐治を結ぶ路線で、利用客が多い鳥取市立病院などの停留所に配置する方針。足腰の弱った高齢者や、体が不自由な障害者らの乗り降りを介助するほか、路線図などの文字などを読むのに苦労する高齢者らには乗り換える停留所や路線名を案内し、高齢者の利便性を高める。市によると、昨年11〜12月に市南部の路線バス利用者を対象にしたアンケートでは、回答した377人のうち、60歳以上が49%。10、20歳代を合わせた若者の割合は25%にとどまるなど、高齢者の利用が多く、南部地域の自治会関係者からも「高齢者の乗り降りを手伝ってほしい」との声が寄せられていたという。
 実証実験には、路線バスを国道53号を通る幹線と支線に分けて、支線は小型のバスなどを走らせるほか、早朝、夕方の時間帯の便数を増やしたり、特定のバス停のみに止まる快速便を導入したりして、通勤・通学客の利便性アップを調べる実験も行う。市民から意見を募り、好評なら来年10月から本格導入するという。市は2012年度の当初予算案に実証実験の関連費として計約2500万円を計上しており、市交通政策室の担当者は「市民にとって便利な路線バスにすることが利用促進の近道だと考えた。路線の廃止などを防ぐためにも努力を続けたい」と話している。

本記事では,鳥取市における「バスアテンダント」の配置の実証実験の取組方針を紹介.なるほど,興味深い.
同取組は,「平成24年2月8日(水)〜平成24年2月28日(火)」の期間で実施されている『南部地域新総合公共交通計画(案)』*1パブリックコメント内に掲載.
同取組は,同計画案35頁からの「第5章 利用促進策」として記載.「バスアテンダント」を「支線と幹線の乗り継ぎ拠点に」「配置」し,「乗降介助,乗り継ぎ案内など」を実施.これにより「高齢者等の乗り継ぎ抵抗を緩和」と「バスの魅力が向上するような活動」*2を想定されている.加えて,「採用段階からのイベント化,配置前の教育状況の公開など,情報をオープンにすることで,取り組みの周知を図ることなども効果的」*3ともある.本記事における「実証実験」もまた事前の「周知」の取組の一つとなることも想定されていそう.また,本記事の実証実験に関しては,高齢者による乗り継ぎに関して重点的に紹介されているものの,同計画案では,高齢者に限定せず,広くバス利用者にとっても「幹線と支線の乗り継ぎ抵抗を緩和」効果にも資することが明記されている.これらの副次的効果による「モーダルシフト*4の状況も把握できると更に興味深そう.

*1:鳥取市HP(組織で探す都市整備部交通政策室お知らせ南部地域新総合公共交通計画(案)〜みなさんのご意見をお寄せください!〜)「南部地域新総合公共交通計画(案)」(鳥取市生活交通会議 鳥取市 平成24年2月)

*2:前傾注1・鳥取市(南部地域新総合公共交通計画(案))39頁

*3:前傾注1・鳥取市(南部地域新総合公共交通計画(案))39頁

*4:藤井聡・谷口綾子『モビリティ・マネジメント入門』(学芸出版社,2008年)18頁

モビリティ・マネジメント入門―「人と社会」を中心に据えた新しい交通戦略

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