不特定多数の人が利用する公共施設などでの喫煙を罰則付きで規制する兵庫県受動喫煙防止条例案が19日、県議会で可決、成立した。官公庁や病院、学校は全面禁煙とし、百貨店やスーパー、大規模飲食店などは分煙を義務付ける。条例の対象は約19万カ所に及び、公共施設では2013年4月、民間施設では14年4月から施行する。同様の条例は神奈川県に次いで全国2例目。
 県は、昨年7月に有識者らの検討委員会がまとめた報告書を踏まえ、条例案を検討。デパートやホテル、飲食店などでも禁煙の義務化を目指したが、業界団体の強い反発を受けて分煙の義務付けにとどめるなど、規制内容は神奈川県と同程度まで大幅に後退した。条例案では、官公庁や病院、学校(大学は除く)は喫煙室の設置や使用も認めない全面禁煙を義務付け、学校は屋外の敷地も禁煙に。百貨店やスーパー、客席面積が100平方メートルを超える大規模飲食店と宿泊施設のロビーなどは、喫煙室設置による分煙を義務化する。これにより県内に約2万店ある飲食店のうち、約4千店が分煙対象となる。残りは喫煙を認めるが、喫煙の可否を店頭に掲示する「ポリシー表示」を義務化する。条例に違反し、改善命令に従わない悪質な施設管理者は30万円以下の罰金、禁煙などの対象施設で喫煙した人には2万円以下の過料を科す。罰則は条例施行から半年後に適用を開始する。一方、喫煙室などの設置には県が財政的な支援をすると規定。設置費用の半分(上限250万円)の助成や低利融資制度を4月にも創設する。
 同条例は神奈川県が10年4月に全国で初めて施行。京都府や千葉県は条例化に向けた協議を行っており、大阪府も今年4月に検討会を設置する。(井関 徹)

 神奈川県に続き、全国2例目として兵庫県でも19日、受動喫煙防止条例が成立した。民間施設にも禁煙を義務づける「全国一厳しい」とされた当初の規制内容は、業界団体などの反発を受けて大幅に後退。分煙を認めたことで条例の実効性を懸念する声もくすぶる。県民の健康を守るため、どう条例を根付かせるか、課題は多い。
 受動喫煙の防止策を協議した県の検討委員会は昨年7月、公共施設に加え、飲食店なども禁煙の義務づけが必要とする報告書を提出。しかし、業界団体の反発で、分煙に緩めたほか、小規模店は店頭に喫煙可否を示すにとどめた。この結果、県内約2万店ある飲食店のうち、8割程度が現状通り。条例化に反対してきた県飲食業生活衛生同業組合の入江真弘理事長は「規制で縛るのではなく、喫煙者らのマナーや意識を高めることが重要だ」と強調しつつも「制定後は周知に協力する」とした。
 一方、検討委に加わった医師らは分煙の容認に「分煙を固定化し、喫煙をさらに助長する」と懸念する。委員長を務めた藤原久義・県立尼崎病院長も「喫煙が原因で年間19万人が死亡し、受動喫煙でも6800人が亡くなっている。世界の潮流は分煙を認めていない」と指摘する。県が昨年末に募集した県民などの意見では、8割が条例制定に賛成・容認した。県は本格施行までの2年間、健康福祉事務所に普及推進員を配置し、各地で説明会を開催して規制内容を周知させる。井戸敏三知事は「各種団体と連携した県民運動で推進したい」とする。先行して条例をスタートした神奈川県が2月に公表した調査では、県民の4分の3が条例を認識し、約3割が禁煙や分煙の店を利用する回数が増えたと回答している。(井関 徹)

本記事では,兵庫県における受動喫煙防止条例制定を紹介.2011年5月26日付同年10月10日付同年11月10日付の各本備忘録にて記録した同県による同条例案.2012年3月19日に「原案」*1が可決*2
同県が,「検討委員会報告書」,「神奈川県条例」,そして,当該「条例」の規制内容を整理された資料「受動喫煙の防止等に関する条例における規制内容について」*3を拝見させて頂くと,同条例の通時的,共時的な特徴(変更点)が把握でき,興味深い.本記事でも報道されている通時的な変更点は,例えば次の通り.まずは,「民間施設等」では,「禁煙義務」及び喫煙室設置の不可との考え方から,条例では「区域分煙義務」化及び喫煙室設置可されている.次いで,「小規模飲食店・喫茶店」に関しては,「客席面積75㎡以下」の店舗での「禁煙義務」から「客席面積100㎡以下」での「喫煙可能表示義務」化とある.そして,「理容所,美容所」に関しては,「禁煙義務」及び喫煙室設置の不可から,客席面積により2区分されており,「客席面積100㎡超」の場合には「区域分煙義務」化,「客席面積100㎡以下」の場合には「喫煙可能表示義務」化とされ,いずれ場合も喫煙室設置可とされている.
「区域分煙」に関する規定に基づき,各判断は施設管理側に委ねられる.その判断に関しては,「空間という資源の配分に私的市場が有効に機能」*4しており,「喫煙規制条例の影響が顕著でないという事実」*5も観察されることもあるという.加えて,顧客が「苦情や好みを積極的に表明する性向が」「不十分な場合は,私的市場の空間配分が不完全になる可能性」*6もあるという.区域分煙の実効性を確保するためには,まずは「発言オプション」*7が肝要ということなのだろうか.

*1:兵庫県HP(暮らし・環境健康・福祉健康づくり「受動喫煙防止条例(仮称)骨子案」に関する県民意見提出手続(パブリック・コメント手続)の実施結果について)「受動喫煙の防止等に関する条例

*2:兵庫県HP(兵庫県議会議案)「平成24年第312回定例会 提出議案一覧(意見書・決議を除く)

*3:兵庫県HP(暮らし・環境健康・福祉健康づくり「受動喫煙防止条例(仮称)骨子案」に関する県民意見提出手続(パブリック・コメント手続)の実施結果について)「受動喫煙の防止等に関する条例

*4:荒井一博『喫煙と禁煙の健康経済学』(中央公論新社,2012年)217頁

*5:前傾注・荒井一博2012年:218

*6:前傾注・荒井一博2012年:218

*7:A.O. ハーシュマン『離脱・発言・忠誠』(ミネルヴァ書房,2005年)37頁

離脱・発言・忠誠―企業・組織・国家における衰退への反応 (MINERVA人文・社会科学叢書)

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