外資による森林などの取得増加を受け、水源となる土地の取引に事前届け出を義務付ける北海道の水資源保全条例が23日の道議会で、全会一致により可決、成立した。道によると、全国初で、4月1日に施行する。
 高橋はるみ知事は成立後の記者会見で「北海道の水資源には世界に誇る価値がある。取引には一定の制約が必要だ。国も土地取引をルール化してほしい」と述べた。条例は、水資源保全地域に指定された土地を売買する場合、所有者が契約の3カ月前までに売却先の氏名や住所、利用目的などを知事に届け出なければならない。

本記事では,北海道において「北海道水資源の保全に関する条例案」が可決されたことを紹介.同条例に関しては,同道HPを参照*1
同条例では,「地表水若しくは地下水から原水を取り入れる施設が設置されている地点又はその設置が予定されている地点」となる「公共の用に供する水源に係る取水地点」及び「国有地を除く」「その周辺の区域」であり,「当該区域における土地の所有又は利用の状況を勘案して水資源の保全のために特に適正な土地利用の確保を図る必要があると認めるもの」を「水資源保全地域」と「指定」(同条例第17条)する.そして,「土地に関する所有権」もしくは,「地上権その他の規則で定める使用及び収益を目的とする権利又はこれらの権利の取得を目的とする権利」を「有している者」が,「当該土地に関する」「対価を得て行われる」「権利の移転又は設定」に関して,「予約を含む」「契約」を「締結しようとする場合」,「当該土地売買等の契約を締結する日の3月前までに」,以下の「事項を知事に届け出なければならない」(同条例第20条第1項)と規定されている.同届出の整備が,同条例の特徴となる.

  • 当事者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあってはその代表者の氏名(権利取得者が未定である場合は,その旨)
  • 土地に関する権利の移転又は設定をしようとする年月日
  • 土地に関する権利の移転又は設定に係る土地の所在及び面積
  • 移転又は設定に係る土地に関する権利の種別及び内容
  • 土地に関する権利の移転又は設定後における土地の利用目的
  • 前各号に掲げるもののほか,規則で定める事項

同届出後に知事は,「関係市町村長に当該届出に係る書面の写しを送付」し「水資源の保全の見地からの意見を求め」(同条例第20条第4項),「基本指針等及び関係市町村長の意見を勘案して必要があると認めるとき」には「当該届出をした者に対し」て,「その土地の利用の方法その他の事項に関し助言をすることができる」(同条例第20条第5項)こととして,その助言に際しては,「関係市町村長に協力を求め」(同条例第20条第6項)とも規定されている.同条例ではこれらの手続において「規定に違反して,届出をせず,又は虚偽の届出をした者」に対しては,上記の「届出」と「届出の内容を是正」に至るよう,「関係市町村長に協力を求め」(同条例第22条第2項),「勧告」(同条例第22条第1項)を行い,更に,同「勧告に従わない者があるとき」には「その旨を公表」(同条例第23条第1項)することもできるとされている.
確かに,届出自体では「監督等を行うために必要な情報を行政機関が収集することを目的」として「行政収集費用を節減」*2ことは可能とはなる.ただ,「許否の応答をすることはない」*3ため,同条例第2条にいう「水資源の保全」が如何に確保されるかは,同条例の執行過程に依拠されることも考えられなくもない.同条例の執行状況は,要観察.

*1:北海道HP(本庁各部・局総合政策部計画推進局北海道水資源の保全に関する条例(仮称)の検討について)「議案第18号 北海道水資源の保全に関する条例案

*2:宇賀克也『行政法総論 第4版』(有斐閣,2011年)143頁

行政法概説1 行政法総論 第4版

行政法概説1 行政法総論 第4版

*3:前傾注2・宇賀克也2011年:144頁