県は財政再建策の一環として、県庁舎周辺の民間ビルに分散している部局や組織を県有施設に移転、集約する方針を固めた。総額で年間約4億5000万円に上る賃貸料のうち、大幅な削減を図る。
 県には現在、本庁舎や新庁舎など四つの庁舎があるが、国からの権限移譲に伴って事務量が増大したため、スペースが足りない状態。県土整備局や企業局の一部、県教育委員会などは周辺の五つの民間ビルに入居している。借り上げ面積は横浜アリーナに相当する約8200平方メートルに及ぶ。
 黒岩知事は、県の緊急財政対策として、各種経費の削減と県有施設の見直しを進めている。民間ビルに分散する部局を、遊休状態になっている県有施設などにまとめて移転させ、賃貸料の削減と県有施設の有効活用という「一石二鳥」を図る考えだ。移転、集約先としては、県庁舎近くの県有施設「神奈川自治会館」(9階建て)が、有力候補に挙がっている。同会館は、体育室や音楽室を備えた県職員向けの厚生施設だったが、予算削減のため、今年3月で廃止になった。今は一部を県が会議室や事務室として利用している。このほかの県有施設では、県税事務所や県人事委員会が入る「横浜合同庁舎」(横浜市中区、8階建て)や、横浜駅近くの県民利用施設「かながわ県民センター」(同神奈川区、15階建て)も移転検討の対象になっている。県は老朽化が進む県庁舎の耐震化として、保健福祉局が入っている分庁舎は建て替え、県議会議場などがある新庁舎は免震改修か、建て替えを行うことを検討している。県は両庁舎の工事期間中、三つの県有施設を仮移転先として利用することも想定している。

本記事では,神奈川県における庁舎管理の取組を紹介.
現在,同県では「本庁舎」「新庁舎」「分庁舎」「第二分庁舎」以外にも3つの庁舎から7つの庁舎を利用*1.その案内図からは隣接してはいるものの,空間的には,軽度の「たこ足配線」*2状態にある庁舎配置.同県では,2012年5月27日付及び同年9月19日付の両本備忘録にて記録したように,「緊急財政対策本部調査会」による最終意見における「施設の原則全廃」の意見を受けて,施設の廃止,譲渡,維持の何れかを検討中.本記事を拝読させて頂くと,7つの庁舎のうち「民間ビル」を賃貸している部署に関しては,「遊休状態になっている県有施設などにまとめて移転」することで,「賃貸料の削減と県有施設の有効活用という「一石二鳥」を図る」ことを企図されている模様.廃止,譲渡,維持という三つの選択肢に,廃止と維持に関しては,それぞれ再活用という副次的な選択肢も追加されているとも理解ができそう.なるほど.
同検討は,2012年9月21日付の神奈川新聞にて,同検討が2012年9月20日に開催された同県議会本会議で発言されたことが報道*3.本記事では,移転先の庁舎の状況も紹介.本記事では,遊休施設への分散(賃貸)庁舎の集約化の背景には「国からの権限移譲に伴って事務量が増大したため,スペースが足りない状態」にあることもその理由として報道.ただし,移譲による事務量が主たる課題とすれば,同県内に位置する市町村の合意をもとに,現行の同県が有する事務権限の移譲を更に進めることにより,不足スペース問題の解消にも結びつきそう..2008年12月7日付の本備忘録にて項目立てを試みた本備忘録の妄想的・断続的観察課題のひとつ,「庁舎管理の行政学」の観点(「第4章:執務と憩いの空間としての庁舎」でしょうか)からも,分散化した庁舎の集約過程は興味深そう.今後の集約状況は,要経過観察.

*1:神奈川県HP( 電子県庁・県政運営・県勢県政情報県全体の広報)「神奈川県庁案内図

*2:鈴木俊一『官を生きる』(都市出版,1999年)392頁

官を生きる―鈴木俊一回顧録

官を生きる―鈴木俊一回顧録

*3:神奈川新聞(2012年9月21日付)「借り上げ庁舎解消・賃借料縮減に知事が意欲/神奈川