葉山町の山梨崇仁町長は9日、町議会による町総合計画後期基本計画の修正案可決について異議があるとして、原案の再議決を求める再議を畑中由喜子議長に申し立てた。町長は「修正内容は、町の執行権にまで踏み込んでおり、容認できない」と述べ、原案の正当性を主張している。町議会は再議について11日に審議する予定。
 後期計画案をめぐっては、6月議会で「後期計画案と基本構想の期間が整合しない」などとして全会一致で否決。町側は今議会に後期計画案を再提出したものの、計画期間を固持したことなどから、議会は計画期間を1年短縮した上、焼却炉の廃止やごみ処理の基本方針などに文言を追加した議員提出による修正案と修正部分を除く原案を可決した。町長は9日、「修正案はごみ処理・再資源化について『近隣自治体との連携を追求』『近隣自治体との協議に着手する』と明記しており、看過できない」と述べた。その理由について、町長は三浦半島2市1町によるごみ処理広域化計画からの離脱をめぐる横須賀、三浦両市との控訴審を挙げ、「見通しが不透明な裁判を争う中で『近隣自治体との協議に着手する』と一方的に記述し、その実現を求められても多くの職員の困惑を招くことになる。修正案を容認すれば町の裁量権を失いかねず、再議で町のしっかりした姿勢を内外に示す」と語気を強めた。
 地方自治法は再議の対象を条例・予算に限定し、再議決要件を3分の2と定めていたが、9月5日の同法一部改正で再議の対象を条例・予算以外の議決事件(総合計画など)にまで拡大し、条例・予算以外の再議決要件は過半数と緩和した。一部改正後の再議は県内では初めてという。

本記事では,葉山町における再議の取組を紹介.本記事を拝読させて頂くと,後期の基本計画案の修正可決に対して,同町長より再議が諮られた模様.
2012年9月5日に公布された地方自治法改正に伴う取組.再議に関して規定されていた地方自治法第176条では,その対象が「議会における条例の制定若しくは改廃又は予算に関する議決」と限定的であったものの,同改正により「長が議会に対して反論を行うことを通じて,議会の議論を活性化し,熟議が深まることを期待」*1され,同条では「議会の議決」*2との規定に改められている.これにより,条例事項,予算事項以外の議決事項も,再議の対象が拡大されたことになる.
同町の場合,2009年に制定された「葉山町議会基本条例」の第15条で,「地方自治法」の「第96条第2項に規定する議会の議決事件は,基本構想に基づく基本計画に関することとする」*3と規定.これにより同町議会の議決事項に基本計画を追記されたことが,今回の再議の対象ととなった制度的な背景となる.ただし,再議による同事案は,条例事項,予算事項とは異なり「過半数」により判断される.そのため,議会による再議事案への「拒否権」*4の提示が想定されなくもない.先の修正可決の現状維持となるか,または,「熟議が深まる」*5ことで,再議事案の現状維持となるか,今後の議決結果は要観察.

*1:植田昌也「地方自治法の一部を改正する法律について」『地方自治』No.779,2012年10月号,49頁

地方自治 2012年 10月号 [雑誌]

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*2:総務省HP(所管法令等新規制定・改正法令・告示 法律)「地方自治法の一部を改正する法律新旧対照表」14頁

*3:葉山町HP(葉山町例規集)「葉山町議会基本条例」(平成21年7月1日条例第13号)

*4:ジョージ・ツェベリス『拒否権プレイヤー 政治制度はいかに作動するか』(早稲田大学出版会,2009年)25頁

拒否権プレイヤー 政治制度はいかに作動するか

拒否権プレイヤー 政治制度はいかに作動するか

*5:前掲注1・植田昌也2012年:49頁