八潮市は、町会・自治会への加入を促す条例制定を検討している。背景には、地域住民のつながりの希薄化に対する自治体の危機感がある。十二月の市議会定例会に提案、来年四月の施行を目指す。条例案には、住宅供給にかかわる事業者が町会・自治会の活動を入居者に紹介することも努力義務として盛り込む方針。 (大沢令)
 市は、二〇〇五年のつくばエクスプレス開業で人口が急増。単身者向けのマンションも増えた。十年前に比べて世帯数は七千四百八十四世帯増えたが、町会・自治会の加入率は75・2%から62・5%に低下。未加入世帯は二倍に増えている。地域住民のつながりが希薄化すると、孤立死などの「死角」が広がりかねない。条例骨子案では、地域のまちづくりを担う町会・自治会の重要性を示し、市や事業者など関係者の役割を明記。集合住宅で組織化に努めることも盛り込んだ。市は今年二月、市内四十四町会・自治会長にアンケートを実施。加入を断られる理由(複数回答)では「加入しなくても困らない」(83%)が最も多く、「活動に関心がない」「近所付き合いがわずらわしい」などの理由も目立った。
 香山庸子・市民協働推進課長は「加入率アップはすぐには難しいと思うが、条例制定をきっかけに町会・自治会と連携して加入促進の取り組みを強化したい」と話す。県内では、さいたま市自治会などへの加入を促す条例を昨年に制定している。住宅供給業者の努力義務を盛り込んだ条例は、京都市が制定しているが、八潮市は「把握している限り、県内では初めて」としている。
◆伊草団地 加入率低下に悩む
 約五百五十世帯が入居する伊草団地(八潮市伊草)では、自治町内会への加入率低下に歯止めがかからない。十年前に90%を超えていた加入率は、77%(四月現在)に低下した。「年間四千八百円(月四百円)も会費を払って何をしてくれるのか」と加入を渋る若い世代や、「役員の仕事が面倒」と退会する人もいるという。老夫婦や一人暮らしのお年寄りが増え、高齢化率は約35%(市内平均約20%)に上る。敬老の日の企画やふれあい喫茶などで、高齢者の親睦や見守りにも力を入れているが、加入率アップの妙案はない。古見満夫会長(78)は「役員の負担を減らすなどの工夫が必要。条例化されれば、退会した人にも再加入を呼び掛けるきっかけになる」と期待を寄せる。賃貸住宅の八潮団地(同市八條)は、自治会への加入率が五割を切った。外国籍の世帯が約百世帯に増え、未加入が多いことも悩みの種という。同団地自治会の岩崎文衛会長(68)は「大震災で隣近所の助け合う大切さが再認識されると思ったが、期待したほどではなかった。敷居を低くして、地道に加入を求めていくしかない」と話している。

本記事では,八潮市における自治会・町会への加入を促す条例の制定に向けた検討内容を紹介.
2012年4月現在「44の町会・自治会」*1が活動されている同市.これまでも,「町会・自治会」に向けて『町会・自治会運営の手引き』を作成.同手引きのなかでは,「引っ越してきた方」への「あいさつ状」の「作成」,や「ちょっとなら」のきっかけ」からの加入,「協力してもらった人」への「感謝の言葉」を述べた事例を掲載し,個々の町会・自治会「未加入者や転入者が加入しやすい雰囲気づくりやきっかけづくりに努め」*2ること「加入促進」の方法として紹介.
一方,同市としてもその加入率の低下は課題として認識.2011年3月に公表された『第4次八潮市行政改革大綱・実施計画』でも,「地域コミュニティの核となる町会・自治会加入率向上に向けた取組を行う」ことを「取組目標」として明記されている.具体的には「町会・自治会と連携」し「町会・自治会加入に関する条例の制定や加入促進キャンペーン等、加入率向上に向けた取組を行う」とされている.工程表では「町会・自治会加入に関する条例の制定」を「平成24年度」*3の取組として位置づけられている.
本記事では,同条例案の検討状況を紹介.「住宅供給にかかわる事業者が町会・自治会の活動を入居者に紹介することも努力義務」を設ける方針の模様.条例制定により,個々の活動内容とともに,加入促進もまた「行政媒介型」*4として役割が高くなりそう.事業者を通じた媒介的な加入促進を整備されることで,その実効性が確保される過程は要観察.