ゼロ! こぎゃんかわいか動物がなぜ死なねばならんと?

ゼロ! こぎゃんかわいか動物がなぜ死なねばならんと?

「役所のなかで避けられる職場ナンバーワン」(136頁)とされる動物愛護センター.動物には愛情をもつ獣医という専門職や行政職員が所属しながらも,殺処分を迫られる職場でもある.同書では,2010年5月26日付の本備忘録でも記録した,熊本市動物愛護センターの「処分「0」」(97頁)に向けた同センターの取組をありのまま描く.
同書を手にとると,まずは,やはり,打越綾子先生による動物愛護管理行政における「政策体系」の観察結果でも述べられている「無責任な飼育放棄や遺棄が行政による犬・猫の引取り・致死処分を引き起こしている」*1現状を痛感し,その無責任さに憤りを感じる.
ただ,憤りばかりではない.自治体の職員であることの気概とは何かを感じ,(難しい管理職がいるなかでの)職場の改善をどのようにすすめか,また,国の法令を実施する段階では,どのように「複雑化」(151頁)した解釈に従っているか(解釈変更の部分もおもしろい部分ですね),そして,現場での窓口に立つ職員たちの裁量的な行動はどのように発動するか(いわば,殺さないための「水際作戦」ですね)と,自治体行政の現場を読み解くこともできる,たいへんな良書.
来年,一年生向けの演習で読もうかなあ.

*1:打越綾子「自治体における政策調整の構造的課題」『公共政策研究』第6号2006年,97頁

公共政策研究〈第6号〉特集 政策の総合調整

公共政策研究〈第6号〉特集 政策の総合調整