歩きたばこを禁止する京都市条例の施行から5年を経て路上喫煙者が減っているが、過料を徴収する区域としない区域で歩きたばこの減少率に差が出ている。条例の目的はあくまでも市全域から路上喫煙の一掃を目指しており、徴収区域外なら吸っても良いという誤解もあるとみられる。市は区域外の住民団体や大学と連携して喫煙マナー向上に向けた取り組みを始める。
 市は2007年に条例施行し、08年から一部地域で過料千円の徴収を始めた。現在は御池、河原町、四条、烏丸の各通に囲まれた市中心部と、清水・祇園、京都駅周辺の3地域で過料徴収している。市は市内30カ所で路上喫煙率を定点観測している。過料徴収区域内では07年に路上喫煙者が平均で1万人あたり68人確認されたが、12年には4人と94・1%減少。区域外でも1万人あたり127人から44人まで減少しているが、減少率は65・3%にとどまっている。条例は市全域で路上喫煙しないよう規定し、身体や健康への被害防止の観点から「特に必要があると認められる区域」を過料徴収区域にしている。市全域を徴収区域にするのは「物理的にも喫煙の権利を制約する点からも難しい」とする。
 路上喫煙率の格差について、市は「徴収区域だけが禁止エリアと思われたり、区域以外なら取り締まられないという認識がある」とみている。このため、年間30万円分を上限にチラシやポスターなどを現物支給し、喫煙マナーを訴えてもらう「たばこマナー向上活動団体」を本年度は3団体認定。今後も認定を広げ、区域外の路上喫煙撲滅を目指す。
 市くらし安全推進課は「条例効果で歩きたばこは減っているが、マナー向上を訴え市全域で路上喫煙を減らしていく」としている。同様に歩きたばこを条例で禁じている神戸市でも、過料徴収区域内では路上喫煙が98%減ったのに対し、区域外では73%にとどまるなど市域全域でのマナー向上が課題になっている。

本記事では,京都市における「路上喫煙等の禁止等に関する条例」*1の執行状況を紹介.
同条例第5条では「市長は,市民等の身体及び財産への被害を防止し,並びに市民等の健康への影響を抑制するため特に路上喫煙等を禁止する必要があると認められる区域を路上喫煙等禁止区域として指定」することを規定.同条に基づき,2007年には市内中心分の「10路線」*2を指定.その後,2010年には「市内中心部の拡大」*3,2011年には「京都駅地域」「清水・祇園地域」」*4と「路上喫煙等禁止区域」を拡大.結果「過料処分件数」では,2008年度は478件,2009年度は391件,2010年度は2749件*5,2011年度は5636件*6と区域拡大に伴い過料処分件数も増加.
本記事では,同区域外での「路上喫煙率」を紹介.減少率が同区域では「94.1%減少」となる一方,「区域外」では「65.3%」と区域内外で書く際があるという.その要因として「徴収区域だけが禁止エリア」として捉えられる可能性も指摘する.なるほど,同条例の同条では確かに同区域は,「特に路上喫煙等を禁止する必要があると認められる区域」と,「特に」との強調がされており,同区域以外もまた「路上喫煙等を禁止する必要があると認められる区域」とも解することができる.ただし,過料の徴収は,同条例第6条及び第11条に基づき同区域に限定されてもいる.ある種の「外部不経済」として「内部化」*7する策,例えば区域拡大も考えられなくはない.しかし,これにより「人海戦術*8のための人員確保がさらに課題にもなる.悩ましい.

*1:京都市HP(市の組織文化市民局各課の窓口くらし安全推進課路上喫煙等禁止条例担当京都市路上喫煙等の禁止等に関する条例の取組について)「京都市路上喫煙等の禁止等に関する条例」(平成19年6月1日,条例第2号)

*2:京都市HP(市の組織文化市民局各課の窓口くらし安全推進課路上喫煙等禁止条例担当京都市路上喫煙等の禁止等に関する条例の取組について)「京都市告示第249号」(2007年10月23日)

*3:京都市HP(市の組織文化市民局各課の窓口くらし安全推進課路上喫煙等禁止条例担当京都市路上喫煙等の禁止等に関する条例の取組について)「京都市告示第81号」(2010年4月22日)

*4:京都市HP(市の組織文化市民局各課の窓口くらし安全推進課路上喫煙等禁止条例担当京都市路上喫煙等の禁止等に関する条例の取組について)「京都市告示第167号」(2011年6月20日

*5:京都市HP(市の組織文化市民局各課の窓口くらし安全推進課路上喫煙等禁止条例担当京都市路上喫煙等の禁止等に関する条例の取組について)「路上喫煙等に係る過料処分件数

*6:京都市HP(市の組織文化市民局各課の窓口くらし安全推進課路上喫煙等禁止条例担当京都市路上喫煙等の禁止等に関する条例の取組について)「路上喫煙等に係る過料処分件数

*7:北村喜宣『環境法』(弘文堂,2011年)24頁

環境法

環境法

*8:北村喜宣『行政法の実効性確保』(有斐閣,2008年)33頁

行政法の実効性確保 (上智大学法学叢書)

行政法の実効性確保 (上智大学法学叢書)