都道府県庁政令市役所で本庁舎内を全面禁煙としながら、議会棟では会派控室などで喫煙を認めたり、分煙にしたりしている自治体が六割に上ることが、本紙の調査で分かった。受動喫煙防止のため、国が「官公庁は原則禁煙」と定めているにもかかわらず、議会が聖域化され、議員だけが特別扱いとなっている実態が浮き彫りとなった。
 二〇〇三年施行の健康増進法や一〇年の厚生労働省の指針は「公共の空間では全面禁煙が望ましい」とうたっている。厚労省は昨年十月下旬、あらためて全国自治体に指針を通知し、受動喫煙防止の徹底を求めた。厚労省がん対策・健康増進課の担当者は「議会が例外というのは法律や指針にそぐわない。会派控室であっても公共空間であり禁煙が望ましい」と話す。
 本紙は昨年十一〜十二月、全国の四十七都道府県と二十政令市に、本庁舎と議会棟の喫煙状況を調査した。本庁舎内を全面禁煙としている自治体は四十二で、残り二十五が分煙を実施している。本庁舎が全面禁煙なのに、議会棟だけ喫煙できるのは栃木県、千葉県、神奈川県など二十六自治体。このうち一部の会派控室などに喫煙所を設けて分煙しているのは十九で、北海道、神奈川県、京都府など十五が、喫煙所の設置費や維持費を公費で負担していた。秋田県広島県など八自治体では一部の会派控室で分煙せずに喫煙が可能。福岡県では議場と職員のいる一階を除き、議員はどこでも喫煙できる。議会棟は本来、知事や市長に管理権があるが、慣習として議会に判断を委ねている自治体が多い。議会棟だけ喫煙を認めている理由として「喫煙所まで遠く、審議に遅れると困る」(秋田県)「会派控室は特定の人だけが利用する」(長野県)「議会の自律権を尊重」(福岡県)などを挙げた。
 一方、本庁舎も議会棟も全面禁煙なのは茨城県千葉市大阪府など十六府県市で、全体の二割にすぎなかった。これらの自治体からは「受動喫煙防止を推進している立場の県が率先して取り組む必要がある」(福井県)、「議員だけ特別扱いできない」(兵庫県)という意見があった。

本記事では,政令指定都市都道府県の庁舎内における喫煙状況の調査結果を紹介.東京新聞による調査.
同調査は,2012年11〜12月に,20政令指定都市と47都道府県に対して実施.「本庁舎と議会棟の喫煙状況を調査」した結果,「本庁舎内を全面禁煙としている自治体」は42,「分煙」としている自治体が25.ただし,本庁舎と議会棟ではその状況が異なる.まず,「本庁舎も議会棟も全面禁煙」としている自治体は42自治体中16.一方で,本庁舎は「全面禁煙なのに,議会棟だけ喫煙」できる自治体は26.その理由は,2つの代表機関での「対抗関係」から,禁煙と喫煙を巡る「抑制均衡」*1からの措置ではなく,本記事の分析では「議会棟は本来,知事や市長に管理権があるが,慣習として議会に判断を委ねている自治体が多い」ことがその理由,という.喫煙も「習慣財」*2とすれば,庁舎管理もまた習慣に依拠されるということなのだろうか.なるほど.

*1:礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『改訂版 ホーンブック地方自治』(北樹出版,2011年)57頁

ホーンブック 地方自治

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*2:池田新介『自滅する選択』(東洋経済新報社,2012年)252頁

自滅する選択―先延ばしで後悔しないための新しい経済学

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