• 『市町村の総合計画のマネジメントに関する調査研究報告書』(公益財団法人東京市町村自治調査会,平成25年3月)

本日は,公益財団法人東京市町村自治調査会さんよりご恵与賜りました同報告書.同調査会が取り組まれた,本報告書の元となる調査の一環で実施された「ヒアリング対象」(4頁)の一人でもあったこともあり,ご恵与いただけたようでした.公益財団法人東京市町村自治調査会さん,誠にありがとうございました.なお,本報告書は,同調査会HP*1からも読むことができます.
本報告書は,「昭和44(1969)年の地方自治法改正により基本構想が義務付けられて以来,市町村の総合計画は社会経済環境の変化に対応」(14頁)しながら変化した,という制度認識に立ち,「平成23年(2011)年に行なわれた地方自治法改正により基本構想の策定義務が廃止されたこと」(14頁)による市町村の基本構想制度・総合計画制度の現在を記述されています.
具体的には,同調査会の設置の経緯からも東京都に位置する「多摩・島嶼地域の市町村(計39市町村)」と,これに特別区(23区)を加え,総合計画の策定状況や地方自治法改正による影響,自治基本条例と総合計画との関係に関するアンケート調査の結果と,7市1区1村(多摩市,三鷹市,狛江市,武蔵野市府中市江東区,そして,藤沢市弘前市,滝沢村)へのヒアリング調査の結果を丹念にまとめられています.また,同調査結果を踏まえて,策定・運用・進行管理の「局面ごと」の「課題を抽出」(19頁)し,今後の総合計画制度として「公共計画」と「行政計画」の2つの「コンセプト」(80頁)に沿ったシナリオとしての「具体的な手法」を「提示」(54頁)されています.
将来,回顧的に自治制度運用を理解するためにも,幾つかある地方自治関連の研究機関が定期的・体系的に調査を進めておくべき対象(と,下名は思っていますが)の基本構想制度・総合計画制度.とはいえ,公益財団法人日本生産性本部が2012年4月にまとめられた『「地方自治体における総合計画の実態に関するアンケート調査」調査結果報告書』*2を除くと,近年調査が余り進められていないこともあり,同報告書は,2010年代初頭の同制度の現状と運用を記す大変貴重な記録.
多くの現状を知ることができる同報告書ですが,下名個人的には,既に実施が自明(といいながらも,全く参加機会を設けない自治体は今あるのだろうか.要確認)ともされる「市民参加機会」への「職員参加」の「関与」(問14)の結果を興味深く拝読.同報告書によると「進行役(ファシリテータ)として討議に参加」する割合は44.8%と最も多く,次いで「ワークショップの討論に職員は参加していない」割合が34.5%,そして,「市民とは異なる立場(職員)で討議に参加」する割合は27.6%.「市民と同じ立場(在勤市民として)で討議に参加する」割合は17.2%とあります.
確かに,住民参加が,計画を通じた自治体への統制,または,住民から首長(自治体)への委任内容の検討手続と考えれば,計画実施の当事者でもあり,住民から首長を介した代理人となる職員は,「ワークショップの討論に職員は参加していない」ことも一つの方策.しかし,現状から見ると大半は「市民参加機会」に「職員参加」する現状が把握できます.
しかし,職員は在勤住民でもあり,そのため,職員の皆さんが計画策定に関わるときには,一住民ではありながらも職員でもあることからか,いわば「職員話法」を期待される様子も窺うことができ,次の指摘にはなるほどと思いました.

市民参加機会への職員参加の実施状況についてアンケート調査を見ると,多摩地域では,市民参加の機会としてワークショップを実施している19市町村のうち,「ワークショップの討議に職員は参加していない」と回答した7つの市町村を除く12市町村(63.2%)において,何らかの方法でワークショップへ参加させていることが分かる」」(32頁)