• 大杉覚「「人口減少」を踏まえた自治体組織・行政サービス」『ガバナンス』No.146,2013年6月号,17〜20頁.

ガバナンス 2013年 06月号 [雑誌]

ガバナンス 2013年 06月号 [雑誌]

  • 大杉覚「2013都議選 生活者の思いくみ取る政治を」『都政新報』第5912号,2013年5月31日,6頁.

大杉覚先生より,『ガバナンス』(2013年6月号)と『都政新報』をご恵与賜りました.ありがとうございました.大杉先生は,『ガバナンス』には「「人口減少」を踏まえた自治体組織・行政サービス」と題する論攷,『都政新報』には「2013都議選 生活者の思いくみ取る政治を」という論攷を寄稿されております.そこで,本日は,前者の同論攷を拝読.
本稿では,自治体が,行政需要の増大と減少という2つのいずれかの局面にのぞむ2つの戦略――拡充戦略と縮減戦略――への政策的含意を4パタンに分類されています.まずは,行政需要増大にのぞむ拡充戦略としての「充足化」路線,次いで,同じく行政需要増大ではあるものの縮減戦略をとる場合の「沈静化」路線.そして,行政需要減少のもとでの拡充戦略となる「活性化」路線,最後に行政需要減少のなかでの拡充戦略となる「適正化」路線です.
そして,同誌の企画でもある「「人口減少」社会」は確かに「行政「総」需要の増大局面から減少局面への転換を意味する」ものの,「現実の需要構造はより複雑に構成されている」(18頁)として,少子化と学校統廃合,待機児童対策を例に「必ずしも人口動態と行政需要が直接連動しているとは限らないこと」(18頁)を明らかにされています.そして,本稿では「「身の丈にあった」姿勢」での「混合戦略」(19頁)の必要性を唱導されております.
このような複雑な需要の下での混合的な戦略にのぞむためには「現状把握やその情報開示」が前提になるとして,例えば「年齢別課税対象者及び個人住民税納税額に関する資料」を通じた「根拠本位」(20頁)の実践事例と同データから得られる含意も紹介されています.そして,本稿の結論ともなる,次の指摘には,なるほどと思いました.

人口減少時代の自治体経営の作法やスタイルは決して奇抜なものではなく,むしろ基本に忠実に自然体であるべきだということであろう.そして何よりも,それぞれの地域で将来出現する人口減少の「正体」をわかりやすく描き,議論の土台として住民と情報共有していく取組みを加速させることを願うばかりである.」(20頁)