実務から読み解く 地方財政入門

実務から読み解く 地方財政入門

本日は,購入後長く鞄の中に入れていた同書.昨日の移動の際に読了.
地方財政制度の知見は,総務省自治財政局で,ほぼ口伝のかたちで伝えられてきたもの」.「文字になったものはごく一部」であり,「正確な知識は」「そこにアクセスしなければ」(4頁)ならない.
下名のような外部観察者は,いざ観察しようと地方財政を前にしても,その複雑(怪奇)さに戦いてしまう.ただそれは外部の観察者だけではない.本書によると「財政担当部署に配属された」ときにはじめて,自治体職員の方々も「実態は通説とはまったく違うことに気付く」(3頁)という.地方財政は「奥深いしくみ」(34頁)のなのである.であればこそ,外部からの観察者が,複雑と難しさを感じるのは仕方がない.本書は「自治体の財政担当者」が「主な読者」(3頁)とされてはいるものの,外部観察者が「奥深いしくみ」の地方財政を理解するには最適な内容.
本書が扱う,地方財政制度,地方交付税制度,予算編成と地方交付税自治体行財政構造改革,資金調達の実務,自治体財政健全化,地方財政の総額決定,地方交付税の算定,地方財政制度の変遷の各テーマを「国の財政運営」「マクロである地方財政計画」「ミクロ」の「自治体財政」の「3つのつながり」(147頁)の堅固さを理解することができる.
下名個人的には資金調達の実際のテーマで扱われた地方債に関して,起債手続と資金調達の変化の理解を深めることができ,大変勉強になる.「政府資金から民間資金へと公的資金の縮減・重点化と市場化の進展が急激に進んでい」(118頁)く「資金調達の多様化」(120頁)なかでは,金利変動リスクを回避しつつ「有利な金融資金を調達」(122頁)するための「知識」と「情報」(123頁),そして,職員が持つ「仕事の勘所」(104頁)が重要となる様子.一方で,このような資金調達の多様化のなかで,本書が描く自治体の現場に関する次の指摘には,なるほどと思いました.

金融の知識の有無に照らすと,金融機関の担当者は金融の知識が豊富ですが,自治体の地方債事務担当者は,経験年数からみても素人に近い状態です.金融市場での情報や分析,先の見通しなどは,プロである金融機関から情報提供を引き出し,的確な判断ができるようにしておく姿勢が必要です.」(122頁)