地方自治 2013年 05月号 [雑誌]

地方自治 2013年 05月号 [雑誌]

本日は,同論攷.先週末に開催された札幌市での研究会のテーマに即した同論攷,往復時に同伴し拝読.
住民自治は重要.敢えて述べるまでもない.では,どのように住民自治を「涵養」するか.これは難しい.目指すところは「社会関係資本の蓄積」(5頁)であろう.だが,社会関係資本は一日で積み上るものではない.長期の時間がかかり,そこには人為性が関わる余地はなさそうでもある.そのため「政策的には「どうしようもないのだ」という無力感」(5頁)も感じる.
しかし,本稿では「一定の時間をかければ,社会関係資本を人為的に蓄積できるのではないか」(6頁)という問題提起をする.前向きな提案である.そして,この具体策を「地域(自治体)内分権」を糸口として,具体的な対象は,認可地縁団体と地域自治区の活用に見出していく.とはいえ,制度があるだけでは,住民自治の涵養には結びつかない.制度を動かし,動き続けるためには目的が必要となる.本稿ではコミュニティビジネスにその活路があるとする.具体的には,再生可能エネルギーだ.本稿では,飯田市が「住民自ら再エネ発電事業を興し,それを運営し,さらに売電収入を活用してコミュニティを解決していく」「一連のプロセス」を「エネルギー自治」(10頁)と呼ぶ.
だが,「エネルギー自治」はなぜ効果的なのだろうか.本稿によると,「住民自ら事業を立ち上げ,公共目的に沿う形で収益を上げ,その収益を共同管理し,地域全体の持続可能な発展のたえにその収益を用いる(地域へ「再投資」する)こと,そしてこれら全体のプロセスを,住民自ら集まって議論し,共同決定していくことを促すことに政策の焦点を合わせていく必要があるだろう.そしてそれは,回りまわって住民自治の経済的基盤を確立することにつながり,その力量を引上げていくことにつながることは間違いない」(12頁),という.なるほど,理念となりがちな住民自治は,実利としての経済的基盤は,実は相補関係でもあり,不即不離な関係でもあるのだろう.
「エネルギー自治」の目指す地点を示された本稿で興味深いのは,飯田市の「エネルギー自治」の実際である.公民館がもつ「「人的資本の蓄積」機能」「「社会関係資本の蓄積」機能」(24頁)もつ組織となっていく過程は驚きもある.また,本稿では地方自治法第260条の2に基づく「地縁による団体」の認可により自治会が法人化したことが「エネルギー自治」を進めた理由とみてもり,これも興味深い.一般に認可地縁団体の規定は「地域的な共同活動のための不動産又は不動産に関する権利等を保有する」ことが目的である.そのため一読する限りでは「地域住民が事業を推進することを後押しすることを目的として定められたわけではない」(18頁)のである.そこで,同市が試みた解釈を紹介した次の指摘は,なるほどと思いました.

もともとこの規定が想定していたのは,自治会集会所の管理などだが,それを小水力発電で用いる発電施設や導水管などの管理と読み替えて,この規定を条文が定める趣旨に沿って適用することが可能な点も考慮された.こうしてみてくると,飯田市の政策は,地方自治法第260条の2のいい意味での「目的外使用」とみることができる.」(19頁)