知らなかった!  「県境」「境界線」92の不思議

知らなかった! 「県境」「境界線」92の不思議

本日は,同書.『知らなかった! 驚いた! 日本全国「県境」の謎 (じっぴコンパクト)』と『なんだこりゃ?!まだまだあるぞ 県境&境界線の謎 (じっぴコンパクト新書)』の2冊を「改題・再編集」した同書.結局,書店で常々に目にしてきたものの,結局手に取らず仕舞いだったため,お徳感もあり今回は購入.
県境未定地は何カ所あるのか.47都道府県中では20都県で県境未定地があり,その面積は13,399平方キロに至る.驚きの広さだ.市町村境となれば「県境未定地の何倍」(312頁)である,その結果,県境,市町村境もいずれもが確定している都道府県は,9県のみであるという.
なるほど,地方自治の三要素の一つである区域は,むしろ境界が定まらないままに自治は構成されていることが日常なのである.これは「行政を運営していくうえでは特に支障がない」(312頁)限りは,未定地であることは顕在化しないためであろう.また,「急いで」「境を確定させて後々までシコリを残すより,このままにしておいたほうよいと判断」(172頁)する継続的事業体である自治体ゆえの知恵もそこにはある.
しかし,顕在化する場合もある.「漁業権」(133頁),「治水」(93頁)と「水利権」(249頁),「税金」(346頁),そして,「地方交付税」(307頁)と,地域や自治体の実利の配分となると「争い」(206頁)が起きる.実利となれば話せば納得することはむしろ少なく,独立した第三者とみなされる,自治庁・自治省総務省等の国の「裁定」(219頁)に移っていく.境界の争いの時間が長い分,裁定に至るまでも長い時間がかかる.確定が納得する場合もあれば,確定すれども納得はしないこともある.また,裁定次第では青森県秋田県久六島のように「青森県編入,その見返りとして,秋田県側に漁業入会権を許可する」(209頁)と,実利であるからこその決着方法もある.
境がなければ自治がない,境がなくても自治はある.そんなことを感じた一冊.
下名個人的には,本書の中心的なテーマである自治体の「境界線」とは少し異なった記述,県名の由来に関する部分,を興味深く拝読.現在の県庁所在都市が旧城下町である理由は,政治的・行政的空間の持続性から一見自明そうですが,説明された,次のように改めてハコ物という実利から指摘されると,なるほどと思いました.

大きな都市には旧城下町が多く,県庁に代用できる建築物もおおくあった.したがって旧城下町に県庁を置けば新たな投資を最小限に抑えられ,財政の乏しい明治新政府には好都合だった.県庁所在地に旧城下町が多いのはそのためである.」(33〜34頁)