生活再建型滞納整理の実務

生活再建型滞納整理の実務

本日は,同書.本年度の卒業研究に取り組む学生さんとのお勉強用として,昨日午前午後を通しての港区でのお仕事の合間に,神保町に行き購入.
業務を終え,電車のなかで読み始めると,なるほど,自治体の債権には「取るか」「捨てるか」以外にも,債権整理を通じて「立て直す」(2頁)方法があるのかと,刺激を受けつつ帰宅.すると,宝塚市役所の報道*1.胸が痛む.次の指摘は,実際の徴収と債権との間の両立のむずかしさを痛感しながら,なるほどと思いました.

自治体債権の債務者は,毎日同じ地域の中で生きて暮らしている生活者です.何でもよいからとにかく「取る」「払わせる」という非情な徴収であれば,納付者の生活基盤を破壊し,市民全体から反発を招いて,自治体行政への信頼を失います.自治体債権の徴収は,「安定した市民生活があってこそ」です.ですから,自治体債権はただ取るだけの徴収一本槍の債権ではありません.納付者が無財産あるいは生活困窮に陥っていれば,積極的に「捨てる」(債権の放棄・免除)ことを選択できる債権です(国税徴収法153条1項.地方税法15条の7第1項.各自治体債権管理条例).さらにいえば,滞納者の経済状況によっては,その生活を守り,生活再建のため,回収することが禁じられている債権ともいえます.自治体債権は,滞納者の生活を追い詰めてまで徴収するものではありません.滞納金を支える環境を整えながら徴収を行う,生活再建と徴収を両立させる理念ある回収である.」(35頁)