- 作者: 瀧康暢,生水裕美
- 出版社/メーカー: ぎょうせい
- 発売日: 2013/04/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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業務を終え,電車のなかで読み始めると,なるほど,自治体の債権には「取るか」「捨てるか」以外にも,債権整理を通じて「立て直す」(2頁)方法があるのかと,刺激を受けつつ帰宅.すると,宝塚市役所の報道*1.胸が痛む.次の指摘は,実際の徴収と債権との間の両立のむずかしさを痛感しながら,なるほどと思いました.
「自治体債権の債務者は,毎日同じ地域の中で生きて暮らしている生活者です.何でもよいからとにかく「取る」「払わせる」という非情な徴収であれば,納付者の生活基盤を破壊し,市民全体から反発を招いて,自治体行政への信頼を失います.自治体債権の徴収は,「安定した市民生活があってこそ」です.ですから,自治体債権はただ取るだけの徴収一本槍の債権ではありません.納付者が無財産あるいは生活困窮に陥っていれば,積極的に「捨てる」(債権の放棄・免除)ことを選択できる債権です(国税徴収法153条1項.地方税法15条の7第1項.各自治体債権管理条例).さらにいえば,滞納者の経済状況によっては,その生活を守り,生活再建のため,回収することが禁じられている債権ともいえます.自治体債権は,滞納者の生活を追い詰めてまで徴収するものではありません.滞納金を支える環境を整えながら徴収を行う,生活再建と徴収を両立させる理念ある回収である.」(35頁)
*1:神戸新聞(2013年7月13日付)「「預金引き出せず放火」 差し押さえに激高 宝塚市役所放火事件」