本日は,同報告書(下名は,同研究所HPから購入しましたが,amazonでは入手が出来ない模様.なぜだろう).
「平成の市町村合併」の「動因」「変化」の「全体像」(1頁)を分析された同報告書.政策立案・施策・実施過程編と影響編の2部構成.政策立案・施策・実施過程編では,国,都道府県,市町村の各層毎での公文書とヒアリング調査に基づき分析.後者の影響編では,行政体制,財政,地域政治と3つのテーマに焦点をあてて既存の各種公表データをもとにデータベースを作成し分析.加えて,スウェーデン,韓国,フランスの自治体合併の調査結果から,日本の「平成の市町村合併」を相対化することで,その特徴を明らかにしている.
本報告書の結論は「「平成の市町村合併」は「究極の行財政改革」を促すツールであった」(188頁)とまとめる.なるほど,そうなのだろう.しかし,個々の章の分析からはこのまとめ方以上に多くの情報と知見を得ることができる.例えば,市町村合併の分析では,当事者である市町村は当然としても,推進アクターであった国の分析に力点が置かれがちである.本報告書の特徴の一つは,これらに加えて,第2章で「都道府県の役割」を論じた点にある.例えば,同章では都道府県の役割を次のようにまとめている.

「総じていえるのは,都道府県は,中央政府から求められた事項について,とりわけ形式的にこれを順守し,その遂行に努めてきたということである.一方で多くの都道府県が,市町村の「自主性」を尊重するというタテマエの下に,首長に代表される地元の意向に常に配慮しながら慎重に事を運び,一方で時には「地元の意向」が飛び交う現場に身を置いて,合併成就のために「政治的」に行動した」(35頁).

「平成の市町村合併」とは併発的に進められた地方分権改革のなかで,都道府県の役割が問われ続けた時代のなかで,国と市町村のいずれにも,「平成の市町村合併」に関わる行政の側面では,一定の距離は置きながらも,とはいえ離れすぎず,市町村合併に臨んでいることがよく分かる.
一方で,第3章の「地域政治の変化」を読むと見えてくる風景も異なる.それは市長選挙である.合併後の2回の選挙では,特に第2回目では「前職では件議会議員・国会議員や県公務員・国家公務員など中央政府都道府県の公職者がより多く当選した」(139〜140頁)のである.本報告書では「都道府県議会における定数削減」(140頁)にその原因をみる.しかし,公選職という政治の側面から都道府県と市町村間を見た場合,両者の距離が都道府県側から近づいていたようにも見えてくる.
繰り返すようではあるが,本報告書は,やはり個々の各章の何れもが興味深い.例えば,「公共施設の再編整理」の結果から導き出された次の指摘からは,上記の全体的な結論と比較からも驚きながらも,なるほどと思いました.

市町村整備施設については合併・非合併自治体を比較しても,大きな差異をみられない.わずかに,合併市町村において小学校の減少が若干停頓し,図書館数が若干増加した程度である.」(65頁)