• 植田昌也「第三〇次地方制度調査会「大都市制度の改革及び基礎自治体の行政サービス提供体制に関する答申」について(上)」『地方自治』No.789,2013年8月号,12〜51頁.
  • 植田昌也「第三〇次地方制度調査会「大都市制度の改革及び基礎自治体の行政サービス提供体制に関する答申」について(下)」『地方自治』No.790,2013年9月号,22〜47頁.

地方自治 2013年 08月号 [雑誌]

地方自治 2013年 08月号 [雑誌]

地方自治 2013年9月号

地方自治 2013年9月号

本日は,『地方自治』2013年8月号,9月に掲載された同報告.2013年6月18日付の本備忘録でも記録した,地方制度調査会の『中間報告』に関する「答申の内容について,その背景や関連した専門小委員会での議論等を含めて,紹介」(上:14頁)する同報告.平明な記載の答申ではあるものの,平明さゆえに答申を一読した限りでは判然としない箇所への逐条解説としての性格をもちそうな同報告.
2013年9月13日に開催された第3回地方分権改革推進本部*1.同回では,第30次地方制度調査会で答申された「都道府県から指定都市への事務・権限の移譲等」を議論.議論の結果は,同回の配布資料からは「都道府県から指定都市への事務・権限の移譲等については、国から地方公共団体への事務・権限の移譲等と合わせて,地方分権改革推進本部において,取り扱うこととする」*2と,基本方針が定められたよう.
しかし,2013年9月13日付の時事通信の配信記事を読むと,「35事務を政令市に移すことを検討することも決めた」*3ともあり,具体的な移譲事務も確定されている.そして,果たして,この35という事務数をどのように考えると良いのか,という疑問もわく.また,思い返してみると,地方制度調査会答申の別表で提示した事務権限の件数は,共同通信の報道でもあるように「73事務」*4であったはず.なぜ35事務に絞り込まれたのか.その答えは,同報告を読むとよく分かる.
地方制度調査会の答申では,「別表に,指定都市に移譲されていない主な事務のうち,指定都市及び指定都市を包括する道府県の多くが移譲に賛成しているもの又は条例による事務処理の特例の活用により指定都市への移譲実績のあるもの等を示している.このような事務については移譲することを基本として検討を進めるべきである」*5と述べる.しかし,具体的な移譲事務の記述には及んでいない.ヒントは同答申の別表にある.
同答申の別表では,上記の通り,73事務を掲載する.掲載されている事務は,政令指定都市の「要請」がある事務,都道府県からの移譲に「賛意」がある事務,既に条例による事務処理特例制度の「実績」がある事務に分類することが可能である.そこで,73事務を見てみると,要請事務は68事務,賛意事務は31事務,実績事務は21事務である(なお,要請もしてなく,賛意もなく,実績もない事務,いわば,論理的には移譲対象に含まれる事務(論理事務と区分すればよいのだろうか)が5事務ある).この要請,賛意,実績が三揃であった事務が35事務であるのかと思うとそうではない.実際には35事務よりも少ない,17事務である.
では,残り18事務はどのように考えるとよいのだろうか.同報告の次の解説を読むとその数の算出方法がよく分かり,なるほどと思いました.

指定都市が移譲に賛成した事務は68事務,3分の2以上の道府県が移譲に賛成した事務は31事務であり,両者ともに3分の2以上の団体が賛成した事務は31事務であった.また.条例による事務処理の特例を活用し,一以上の指定都市に移譲されている事務は,21事務であった.この31事務と21事務の間の重複を除くと35事務であり,これらについては,答申において,移譲することを基本として検討を進めるべきであるとされた」(上:34頁)