本日は,同書.
広場という公共空間をどのように利用するのか.その一つの実例が富山にある.「にぎわいの場 富山グランドプラザ」である.
本書は,グランドプラザという広場で,いかに賑わいが生まれ,それを支えているかを描く.では,どのように「賑わいを創出する」(富山市まちなか賑わい広場条例第1条)のだろうか.まずは,広場を運営する側の工夫や広場に集まる人々が必要である.グランドプラザは「「協働」の結晶」(5頁)なのである.しかし,本書を読むと,もう一つ重要なことが分かる.それは,行政職員の役割である.
「誰もが,誰にも制限を受けず,届出の必要もなく,365日,24時間,まったく自由に,自己責任で使える広場」(50頁)を実現するための制度づくりは,行政職員の役割である.そして,広場を活用しようとする際の「アイディアの種」に「賛同」し「事業」(187頁)とすることができるのも,行政職員である.「運営そのものを実験」(39頁)的な空間として物理的に整備されたグランドプラザが,実態的に賑わっていく過程が描かれた同書を読むと,整備期と直営期(2007年9月〜2010年3月)での行政の関わり方の大切がよく分かる.
そこで,ふと思う.実験的であるからこそ,行政が関わる.行政が関わるからこそ,実験的にもなりうる,のではないか,と.
広場は開かれた空間であるように,たとえ直営であっても行政の占有物ではない.「人のための専用空間」(128頁)として広場があれば,一人ひとりの人が主体となることが望ましいのだろう.しかし,実験的であるのは何も民間側の専売特許ではない.行政も実験的になりうるのである.例えば,一つひとつの賑わいを「つながってい」(186頁)く,そして,つなげていく業務にこそ,行政が得手とするところであろう.本書を読むと,開かれた広場という公共空間への行政の関わり方の着想を得ることができそうだ.
次の指摘からは,行政側の職員も決して一日で為し得るものではないことが分かり,なるほどと思いました.

再開発事業に関わられている職員の方々は,本当に多くの時間を費やして中心市街地にでかけられ,時間をかけ,気持ちを傾けて真摯に地権者の皆さんとむきあっていらっしゃいます.そして,地権者にとっては,市民の生活をより良くするために全力を尽くしたいと本気で考えている信頼できる行政マンだからこそ,心をひらかれるのではないでしょうか」(191頁)