- 作者: 宇野重規
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2013/10/15
- メディア: 単行本
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「民主主義への不信」が横わたる.民主主義は「いかがわしい通貨」として「額面通り」*1には受け取られなくなったのかもしれない.そのため,民主主義は混迷する.
本書は,「真に一体化した共同体が単一の共通意志をもつというフィクション」の「限界」(13頁)の混迷の原因をみる.本書の民主主義像は「民主主義は時間のなかで生成変化」(205頁)するものとみる.そして,「自分たちの社会を変えていくこと」(18頁)に民主主義の本質があるともみる.
では,どうするか.本書はプラグマティズム型の民主主義の可能性を探求する.その際,核となるは「習慣」だ.習慣は頑迷固陋なものではない.むしろ「不断に検証され,修正されていく」(123頁)ことで習慣になる.一人ひとりの個人の信念が積み重なり,変わりゆくなかで「やがて習慣というかたちで定着」(139頁)する民主主義像がある.民主主義はやはり生成変化するものなのだろう.
「時間をかけて形成され,身体化された」(114頁)習慣は「つねに変化に対して開かれている」(123頁).そのため「習慣とは人と人とつなぐメディア」(139頁)にもなる.習慣こそがつながりの種子となのだろう.そして,本書では「「民主主義の習慣」が生み出されている」場を「「ローカル」な場所」(206頁)での実践のなかに見る.そして,海士町の実例から見た,次の指摘はなるほどと思いました.
「いまや地域社会は地域社会として孤立してない.少なくとも,活性化している地域同士は必ずつながっている.むしろ東京などの都市部の住民の方が,そのようなネットワークから遮断され,現在の日本で起きている事態を理解していないのかもしれない」(180頁)