財産区のガバナンス

財産区のガバナンス

本日は,同書.
気がつかないものの,身近にある特別地方公共団体財産区がある.その数,4,019.北海道,埼玉,佐賀,鹿児島を除く43の各都府県に複数の財産区がある.管理には議会(658区)や総会(21区)*1を置くことで,財産区をもつ市区町村の議会に「議決すべき事項を議決させることができる」(地方自治法第295条).
では,財産区自治的なのか.そして,実際にどのように管理しているのだろうか.前提には「財産区の目的,権能は,限定されており,この範囲内においてのみ独立の法人格を認められるにすぎない」*2とも解され,制度上は制約のもとで自治的な特別地方公共団体財産区でもある.しかし,制度的な制約はあるものの,各財産区の運営は一様ではない.特に,その名の通り財産をもつ財産区では運営方法,つまりガバナンス次第で財産区の安定化や良化,場合次第では悪化をもたらす.
茅野市財産区を分析する本書では,共通する政策課題への異なるガバナンスがもたらした成果を鮮明に描く.それは,リゾート開発への対応である.一般的に,観光開発には二つの接近方法がある.一つは内発型開発であり,もう一つは,外来的開発である.理念的には内発型開発が「もてはやされる」(242頁)一方で外発型開発はやや分が悪い.
では,実際はどうか.本書の面白さは,茅野市内の45の財産区を対象に検証した点に面白さがある.特に,第5章と第6章と二つの財産区での観光開発の結果での検証からは,上記の理念は思い込みでしかないことが分かる.約13億円台から15億円台の予算規模をもつ同市の財産区は「地域社会の福祉面や地域の自然資源の管理面において実績を上げ」(102頁)ることができているのも「財産収入及び繰入金の観光的土地利用による継続的な収入の確保」(102頁)が「比較的安定」(248頁)していることがその要因の一つにある.つまり,外発型開発の成果を見て取るのである.
財産区という渋い対象に,地道な資料と聞き取り調査に基づき論じられた同書.「茅野市においては少しずつではあるが,動きが見え始めてきた」とされる,財産区のガバナンスの提言に関する次の指摘は,なるほどと思いました.

財産区の利用(経営)と所有(管理)の分離を図り,財産区と開発会社のみが利用にかかわるだけでなく,財産区民以外の人々も財産区の利用面で参画することを可能とする」(251頁)