今年4月に北海道内初の読書条例を施行した恵庭市。10月からは市内の飲食店などが店内に置いた本を自由に読んでもらう「まちじゅう図書館」が始まった。読書活動は市民にも広がり、読み聞かせサークルなどボランティアも盛んだ。国内だけでなく海外からも視察が訪れ、読書を生かしたまちづくりに注目が集まっている。【小川祐希】
 ◇24店舗が共同で
 ログハウスを改造した恵庭市上山口のカフェ「おうちカフェMayMe’s(メイミーズ)」。カントリー調の音楽が流れる店内の本棚には「鏡の国のアリス」などの児童文学書や絵本、園芸雑誌など三浦真実店長(43)が選んだ約250冊が並ぶ。恵庭市は10月から市内の飲食店や銀行、病院など24店舗と共同で「まちじゅう図書館」を始めた。各店が好きな本を置き、市は地図を作製して参加店舗を紹介する。メイミーズでは参加に合わせて蔵書を150冊増やしたといい、三浦店長は「好きな本を共通の話題にしてお客さんと話が弾む」と取り組みを歓迎する。参加店舗は今後も増える見込みだ。
 ◇「読書が好き」
 読書によるまちづくりが盛んな恵庭市だが、市立図書館ができたのは1992年と当時の道内32市で最後だった。開館後も小中学生の利用が増えず、若者の活字離れに図書館職員の間には危機感があった。そこで2000年、全国に先駆けて新生児に絵本2冊を贈る「ブックスタート」を始めた。06年までには道内で初めて、市内全13小中学校の図書室に司書を常駐させた。さらに市立図書館と学校図書館の蔵書データベースを統合し、児童・生徒たちはどの図書館・室からも本を取り寄せられるようにした。これらの取り組みが奏功し、市立図書館の児童書の年間貸し出し冊数は13万冊(99年度)から20万2000冊(12年度)に増加。昨年度の文部科学省全国学力・学習状況調査では、「読書が好き」と答えた小学生の割合が全国平均の47・7%を約10ポイント上回った。
 ◇男性ボランティア
 取り組みは市民にも広がっている。市立図書館で読み聞かせや本の修理などを行うボランティア団体は開館当初の4団体から23団体に増え、約340人が参加する。中でも異色なのは65〜82歳の男性10人を中心に活動をする「男声読み聞かせ隊 with Ms」。男性の低い声がお化けや怪獣が登場する怖い場面で効果的で、人気だという。佐々木正夫会長(82)は「話を聞く子供たちの輝く目から長生きの力をもらえる」とやりがいを感じている。昨年は「子どもの読書活動優秀実践団体」として文部科学大臣表彰に選ばれた。
 ◇24時間開館も
 読書を生かしたまちづくりを明文化し取り組みをさらに推進しようと、市は今年4月、道内で初めて、全国でも4番目の「人とまちを育む読書条例」を施行した。市には読書環境の整備を求め、市民には読書活動への参加を促している。10月10日には市立図書館の24時間オープンも実施した。恵庭の取り組みは全国から注目を集めている。自治体などの視察は昨年の16団体から今年は23団体(予定も含む)に増えた。本州や九州などの国内だけでなく韓国など海外からも訪れた。市図書課の内藤和代課長は「読書活動で世代を超えた地域の交流が生まれている。今後は本を目当てに外から恵庭に来る人を増やしたい」と意気込む。

本記事では,恵庭市における「人とまちを育む読書条例」*1の施行状況を紹介.
本記事からは,同市全体に空間的に拡がる読書活動の現状,いわば,同市全体が空間的に「図書館」となりつつあるかのようなようすを紹介.では,時間的にはといえば,本記事でも紹介されているように,
同市立図書館では「夜8時から翌朝8時まで夜通しで図書館を開館する初の試み」を「10月10日(木)から11日(金)にかけて実施」.同日は「楽器演奏や絵本講座,深夜のおはなし会など」*2が開催され,まさに「屋根のある広場」*3として活用されてもいる.時空間の拡がりをもつ読書活動と「図書館」.「人とまちを育む読書条例」に基づく更なる拡がり方は,要観察.

*1:恵庭市HP(くらしの情報図書館人とまちを育む読書条例恵庭市人とまちを育む読書条例が制定されました)「恵庭市人とまちを育む読書条例

*2:恵庭市HP(くらしの情報図書館イベント情報図書館ニュース)「月刊図書館ニュース」253号,2013年10月31日号

*3:アントネッラ・アンニョリ,『知の広場 図書館と自由』(みすず書房,2011年)104頁

知の広場――図書館と自由

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