教育委員会――何が問題か (岩波新書)

教育委員会――何が問題か (岩波新書)

本日は,同書.
「教育を子どもたち=市民の手に取り戻すシステムをいかに築くか」(35頁).本書のテーマだ.
しかし,現行の教育システムでは,この視点が「欠落」(34頁)している,という.本書では,現行の「文部科学省から都道府県教育委員会(教育長)ー市町村教育委員会(教育長)ー学校長という下降型の教育システム」(34頁)のその原因をみる.
また,教育委員会法から地方教育行政法と移り変わるなかで調えられた「教育行政の一般行政からの分離・独立」「比権力的行政」「指導・助言・援助・勧告」(147頁)という特徴をもつ「タテの行政系列」(140頁)たる教育行政のシステムは極めて堅固なものである,ともみる.
ではこの堅固さを支える要因は何か.本書では,「文科省に異議とを唱えない従順な集団」(150頁)とともに,幾つもの「教育団体」(151頁)の存在を指摘する.教育団体のなかでも全国都道府県教育長協議会と文部科学省との間での「法令や文科省政策の解釈の研修」「問題事象におうじたマニュアル作成」(153頁)といった「「共同統治ルール」を作成」(154頁)してきた,とする.
方や,教育委員会を支える事務局への分析からは「教員系職員がこれほど多数所属」する「「特異」な組織である」(65頁)とともに,その組織がまた「事務局内の教員系職員のインナーサークル」(68頁)が「ある種の「自律性」をもった閉鎖的なサークル」(69頁)であり,教育委員会の「独立性」を堅固なものとしているようである.
冒頭のテーマを実現するための教育行政のシステムとしては,「教育委員会制度についての「必置規制」を廃止し,自治体教育行政部門を基本的に政治的代表性と正統性をもつ首長のもとの組織に統合すること」(211頁)ことを提案する.
このように読み進めてきたなかで,日本の行政システムとして教育行政をみた場合,教育行政の独自の論理構造よりも,「一般行政」なるものとの類似性もまた読み取れることは興味深い.例えば,次の指摘には,なるほどと思いました.

指導・助言・援助を根幹とする教育行政は,「行政らしからぬ行政」なのだろうか.実定法に許可,認可,免許の取消しなどの行政処分のさだめがあるばあいでも,事業官庁は即,行政処分を発動するのではなく,指導・助言を前置してきた.行政処分の権限が実定法にさだめられていないばあいには,設置法を援用して相手に指導をくわえてきた(コメの減反など典型例のひとつ).行政処分に直結しない問題への指導・助言は日常茶飯事であり,日本の行政の特徴といってよい.」(158頁)