地域再生―行政に頼らない「むら」おこし

地域再生―行政に頼らない「むら」おこし

 本日は,同書.

 「やねだんに行かない?」と誘われて,2013年12月9日から11日の日程で行ってきました鹿屋市柳谷集落.公私ともに初めての鹿児島訪問でした.
「日陰の(自治体)行政学者」を自認する下名は(庁舎内の行政活動を研究しているという意味ですが),「日向の(自治体)行政」の現場をあまりよく知りません.お誘いを受けたとき,滝川クリステルさんのIOCでのプレゼンのように「や・ね・だ・ん?」と「やねだん」という単語の一文字一文字が区切れで鳴り響き,語尾に疑問符がつくくらい,全く未知の地名でした.

 柳谷を鹿児島弁で「やねだん」とよぶ人口約300名の集落.訪問事前にいろいろと読み進めてみると,なるほど,地域再生の分野では最も有名な地域の一つの様子.例えば,カライモや焼酎の製造での自主財源確保,その自主財源をもとにした住民への年1万円のボーナス提供,自治体職員を主たる対象とする故郷創生塾 の開催,荒れ果てた古民家の再生と古民家への芸術家の移住促進があります.
 公民館長の豊重哲郎さんからまるまる1日を割いて頂き,活動拠点の柳谷自治公民館や,わくわく運動遊園,集落内で空き家を改修した迎賓館とネーミングされた古民家,おそば屋さんでもある未来館などでじっくりとお話をうかがいました.

 豊重さんのお話からは,やねだんが進めてきたいくつもの取組には,一つの方針が明確にあることがよく分りました.それは,とにもかくにも住民自治を徹底する方針です.そして,住民自治のためには人を重視しています.ひとつの取組を実現するためにも,集落の住民を説き伏せるのではなく,納得してもらえるような人への教育的配慮が,この集落では効いているようです.そして,住民自治は単なる理念ではありません.例えば,集落の現在と将来を数値で徹底的に説明しようとする姿勢がまさにそうですが理念を裏打ちをする「説明」,「開示」,「還元」というリアリスティックなまでの姿勢が自治を根づかせているようです.理念(豊重さん曰く「感動」)と数値があることで,さまざまな背景をもつ住民がともに行動するうえでは不可欠な条件となっているようでした.

 村落の自治が極めて細やかな配慮のうえで営まれているやねだん自治は放置では決してなりたたない.行政に頼らない集落は,行政ではないからこそ運営ができているようでした.とはいえ,アイディア満載の活動を一代で築いたやねだんの方程式は,今後は引き継ぐことが出来るのだろうか.東京に戻りやねだんで購入させて頂いた本書を開き,そんなことを考えさせられる機会でした.しかし,次の指摘には,なるほどと思いました.

行動するからアイディアはうまれる.動き続ければ必ずアイディアは次から次へと連発となるはずである」(214頁)