「指定都市,中核市特例市のうち地域の中枢的な役割を果たすべき都市」を「地方中枢拠点都市」と呼び,その「地方中枢拠点都市を核とする圏域以外の地域についても,中心市と近隣の基礎自治体との間で都市機能の「集約とネットワーク化」を進める」*1ことを提案した第30次地方制度調査会の答申.とはいえ,地域により「集約とネットワーク化」を進める条件や進め方も異なるだろう.
 そこで,同答申を踏まえつつ,総務省に設置された「基礎自治体による行政サービス提供に関する研究会」*2では,「地方中枢拠点都市圏」,「条件不利地域」,「三大都市圏」それぞれでの「連携のあり方に関する指針」(4頁)をまとめている.
 まず,「地方中枢拠点都市(圏)」では「地方中枢拠点都市(圏)」自体が「先行する取組である定住自立圏構想の「集約とネットワーク」の考え方をベース」(5頁)とするため「定住自立圏構想の考え方,圏域形成手続,財政措置等を参考」(6頁)にすべきであるとする.そして,「地方中枢拠点都市」は「相当の人口規模と中核性を備える」ため,「①圏域全体の経済成長のけん引」となり,「②高次の都市機能の集積」し,「③圏域全体の生活関連機能サービスの向上」を図る「3つの役割」(5頁)があるとする.ただし,3つの役割全てを「地方中枢拠点都市」に集約するわけではないようでもある.同報告書では,①と②は「地方中枢拠点都市」,③は「近隣市町村とのさまざまなネットワークを強化」(9頁)しつつ実施する,ともある.
 では,どのように「地方中枢拠点都市(圏)」の「一体性」を保ち,三つの役割を発揮するのか.本報告書では,「連携協約」(11頁)の締結を提唱する.これは「「定住自立圏構想推進要綱」に定められた定住自立圏の形成手続と同様」(13頁)な手続が想定されている.ただし,同報告書では,「より安定的」な連携の実現のため」には,定住自立圏の「私法上の契約行為である協定」から「連携協約」(13頁)に基づくことを提案する.とはいえ,「具体的に記載」するとなると何をどこまで,そして,どこが上記の役割を担うかで議論が分かれうる.例えば,「中心部に投資が集中すると,近隣市町村の理解や合意を得ることが難しくなるという問題」(12頁)がある.つまり,「丁寧な調整」は必要となり,加えて「近隣市町村の住民からの民主的コントロールの担保という観点」が必要となる.そこで,本報告書では,「「地方中枢拠点都市」の首長と近隣市町村の首長とが定期的に協議すべき」(12頁)との指針を示す.また,財源がなければ協定は画餅に帰す.本報告書では,上記の①と②の役割を担うため「「地方中枢拠点都市」となる市に対して行う」(13頁)とする.ただし,「近隣市町村」が①と②の役割を担う場合には,「近隣市町村に対して負担金を支払うこと等も想定」も提唱する.
 二つめは,「条件不利地域」である.しかしながら,「条件不利地域」は「近隣に連携すべき大きな都市がないなどの地理的条件等」があり,上記の「市町村間の連携によって問題が解決できない」こともある.そこで.本報告書では,「連携相手が都道府県しか想定されない市町村」は「都道府県が市町村と連携して補完や支援をしていくことが考え」(16頁)が示されている.とはいえ,これらの市町村の全てが都道府県が補完や支援できるとは考えていない.「都道府県との連携にはなじまない」(16頁)事務を例示したところは特徴的である.具体的には,「住民基本台帳,戸籍,選挙など」(16頁)であるとする.一方で,なじむものも例示する.「各種社会福祉関連の業務(介護保険や地域包括ケアシステムに関する業務,障害者福祉に関する業務,消費生活相談等)」「道路・橋りょう,水道などの地域のインフラの維持等に関する業務のうち,高度の専門性が要求されるもの」(17頁)とする.具体的には,こちらも地域中枢拠点都市と同様に「個々の市町村と都道府県が地域の実情に応じて対象事務や連携方法を協議し「連携協約」に記載すること」(17頁)を提案する.
 最後は,「三大都市圏」である.「三大都市圏」の市町村もまた,「公共施設」(18頁)や「介護保険施設」(19頁)では,「単独の市町村であらゆる公共施設等を揃えるのは困難」(18頁)な状況にある.しかしながら,「現在は広域連携があまり進んでいない」(19頁)現状にある.そこで,本報告書では「三大都市圏」も同様に「「連携協約」に基づく広域連携を進めていくべき」(19頁)との考えを示す.
 このように,「地方中枢拠点都市(圏)」に比重は置きつつも,3つの地域それぞれでの課題と,方や連携のあり方では「連携協約」の「活用」(4頁)を提唱した同報告書.「連携協約」自体の確たる内容が判然とはしないものの,なるほどと思った箇所は,次の指摘.事前に確定した制度の内容であるよりも,簡素で効率的な協定であることが,連携を確保する機会にもなるのだろう.

検討中の柔軟な連携の仕組みにおいては,地方公共団体が地域の実情に応じて自由に内容を協議して地方公共団体相互間の「連携協約」を締結することができ,紛争解決の手続もビルトインされることとなる.「連携協約」には,政策面での役割分担等について自由に盛り込むことが可能となる.また,組合や協議会などの別組織を設置しない点で、より簡素で効率的な相互協力を可能とする仕組みとなる.結果として,柔軟な連携の仕組みは,自由度を拡大して,より一層の広域連携を促進するものとなる」(4頁)