政府の地方分権に関する有識者会議(座長・神野直彦東大名誉教授)は2日の会合で、自治体の提案で事務権限の移譲などの制度改正を進める「提案募集方式」を今年度から導入することを決めた。地方の現場の声を分権改革に反映させるのが狙い。月内に全閣僚がメンバーの地方分権改革推進本部で正式決定する。
 提案募集は年1回行い、約2カ月間受け付ける方向。原則として、提案する自治体だけでなく、全国的に必要な制度改正を対象に募り、現行制度の抜本的見直しに関する提案も認める。受け付けた提案は、内閣府が関係省庁や自治体と折衝し、年末までに採否を判断する。

本記事では,地方分権改革有識者会議における検討状況を紹介.内容は,2014年4月2日に開催された同会議の第12回で審議された「提案募集方式」*1
都道府県,市区町村」「広域連合,一部事務組合」「地方六団体」や「地方公共団体を構成員とする任意組織」*2が提案主体となり,「地方公共団体への事務・権限の移譲」と「地方に対する規制緩和(義務付け・枠付けの見直し、必置規制の見直し)」*3の2種類(国への移管は含まれないのですね)を提案することを可能とする同制度.
「事務・権限の移譲の場合」は,従来の委員会勧告では「出先機関の事務・権限を対象」であったことに加えて,「本府省の事務・権限を対象」とすることを可能とする.「義務付け・枠付けの見直しの場合」には,「委員会勧告」では「自治事務に関して法律に基づくもの」であったが,「法定受託事務に関するものや政省令等に基づくもの等」も対象になる.加えて,「現行制度の見直しにとどまらず,制度の改廃を含めた,抜本的な見直しに係る提案も対象」や「従来と同様に,事務・権限の移譲等に関連する提案も対象」*4となる.
ただし,提案対象は「全国的な制度改正に係るものを対象」とされる.仮に「全国一律の移譲が難しいなどの場合」に「個々の」自治体からの「発意に応じた選択的な移譲(手挙げ方式)とする提案等も行うことができる」とする.その際に,「提案」した自治体に「当面」「規制緩和等を実施」した後,「全国的な改革へと波及させる場合」には「「構造改革特区」等の提案募集方式を活用することも可能」」*5と,「提案型」*6の制度を併設する模様.
「スケジュール」*7を確認すると5月から6月で「提案募集(随時提出)」を行い,「地方分権改革推進本部」から提案に対する検討について各府省への協力依頼」*8をし,「所管府省」と「提案主体」への「意見照会」後,「国・地方間で最終調整」を行い,12月に同本部で「対応方針の決定」し,閣議決定される予定.具体的な提案事項の提出状況は,要経過観察.

*1:内閣府HP(内閣府の政策地方分権改革地方分権改革有識者会議地方分権改革有識者会議開催状況」:第12回地方分権改革有識者会議 議事次第・配布資料)「資料8 地方分権改革における「提案募集方式」の概要(案)

*2:前掲注1・内閣府(資料8 地方分権改革における「提案募集方式」の概要(案))2頁

*3:前掲注1・内閣府(資料8 地方分権改革における「提案募集方式」の概要(案))1頁

*4:前掲注1・内閣府(資料8 地方分権改革における「提案募集方式」の概要(案))2頁

*5:前掲注1・内閣府(資料8 地方分権改革における「提案募集方式」の概要(案))1頁

*6:田辺国昭「規制改革 ―分析のための試論―」森田朗・金井利之編著『政策変容と制度設計―政界・省庁再編前後の行政―』(ミネルヴァ書房,2012年)293頁

*7:前掲注1・内閣府(資料8 地方分権改革における「提案募集方式」の概要(案))3頁

*8:前掲注1・内閣府(資料8 地方分権改革における「提案募集方式」の概要(案))3頁