京都府京都市が「二重行政」の弊害解消に向け、それぞれが設置している施設の業務内容や連携の現状に関する調査結果をまとめた。今後、さまざまな行政施策について点検して効率化策を検討する方針だが、11年前にも同様の調査研究を実施しており、このとき業務重複を解消できたのは一部にとどまる。長年の懸案とされてきた「二重行政」の改善にどうつなげていくのか、本気度が試される。
 調査は、京都市内にあり、府市が別々に設けている27種類の施設について、法律上の設置根拠を基準に3分類した。それぞれの施設概要と業務時間、職員数などを記し、現時点での府市連携状況をまとめた。府市双方に法律上の設置義務があるのは、児童相談所精神保健福祉センター、衛生研究所、動物愛護センター、公営住宅の5種類。府だけに設置義務があるか、府市双方に設置の努力義務がある施設は消費生活センター身体障害者更生相談所、図書館など12種類で、府市ともに設置規定がない施設は資料館や男女共同参画センター、計量検査所など10種類だった。
 このうち、衛生研究所(府保健環境研究所、市衛生環境研究所)と動物愛護センター(府動物愛護管理センター、市家庭動物相談所)は、府市で施設を共同設置することが決まっている。府市それぞれに設置義務がある施設を一つの建物に入れることで法律上の制約をクリアした。一方、設置義務がない各施設は「電話相談を共同実施している」(消費生活センター)、「改修の工期が重ならないよう調整した」(スポーツ施設の体育館)などの連携事例はあるが、共同化や一体運営の動きはない。
 府市の「二重行政」をめぐっては、議会や市民から行政の無駄を排除すべきとする指摘を受けて府市の幹部職員が2002年に共同研究会を設置。1年をかけて類似施設・事業を点検したが、組織の根本的な改廃には踏み込まず、共同化や合理化を実現できたのは京都駅ビル下京区)内にあった観光案内所の一元化など一部にとどまっている。府市の担当者は「施設や業務の統合ありきではないが、府市民サービスの向上につながる事業の進め方や連携の強化策を具体的に議論していく」としている。

本記事では,京都市京都府における施設等の連携に関する点検の取組結果を紹介.同点検の内容は,同市HPを参照*1
同点検では,27の施設分類に基づき「市・府で調査を実施」.本記事でも紹介されているこれらの「施設の役割分担や連携の現状」*2は,以下の通り.
まず,「市・府ともに国の法律による「設置義務」」がある施設は,5施設(児童相談所精神保健福祉センター,衛生研究所,公営住宅).次に,「市・府に,国の法律による設置に係る規定」がある施設は,12施設(配偶者暴力相談支援センター,消費生活センター,スポーツ施設,美術館・博物館,身体障害者更正相談所,知的障害者更生相談所,発達障害者支援センター,母子福祉センター・母子家庭就業・自立支援センター,公園,高等学校,図書館,総合教育施設).三つめは「市・府がそれぞれ条例等で設置」する施設が10施設(資料館,男女共同参画センター,文化施設,市民・府民活動支援施設,計量検査所,産業技術支援施設,イベント・展示施設,宿泊・研修施設,高齢者支援施設,健康増進施設).
以上の3つの区分のうち,必置となる第一区分では,本記事でも紹介されているように,「動物愛護センター」「衛生研究所」が「施設の共同化」*3が図られる模様.一方,任意となる第二区分(と第三区分)では,「必要不可欠な施設」「複数ある方が利便性が高く,市民サービス向上につながる施設もある」*4との見解も示されている.各施設の機能の視点から,「実施の仕方」の「連携」*5による役割分担と連携という正面から議論とともに,各施設の管理維持の仕方による「公共施設の老朽化問題」*6という後門からの検討もなされることがあるのだろうか.今後の検討状況は,要経過観察.

*1:京都市HP(市政情報地域連携・広域連携府市協調:【広報資料】京都市と京都府の施設等の連携に係る点検について京都市と京都府の施設等の連携に係る点検について〜更なる府市協調による効率的・効果的な行政を目指して〜

*2:前掲注1・京都市京都市京都府の施設等の連携に係る点検について〜更なる府市協調による効率的・効果的な行政を目指して〜)1頁

*3:前掲注1・京都市京都市京都府の施設等の連携に係る点検について〜更なる府市協調による効率的・効果的な行政を目指して〜)2頁

*4:前掲注1・京都市京都市京都府の施設等の連携に係る点検について〜更なる府市協調による効率的・効果的な行政を目指して〜)2頁

*5:北村亘『政令指定都市 - 100万都市から都構想へ』(中央公論新社,2013年)212頁

*6:前掲注5・北村亘2013年:189頁