文部科学省は9日、全市区町村を対象に、児童生徒への就学援助の実施状況を調べた結果を公表した。昨年8月に生活保護基準が厳格化され、連動して就学援助の認定基準も厳しくなることが懸念されていたが、1768市区町村のうち96%に当たる1697自治体は基準を維持していた。
 就学援助は、経済的に厳しい家庭の児童生徒に学用品代や修学旅行費などを支援する制度。対象のうち、生活保護に近い状態と市区町村が認定する「準要保護」世帯は、各自治体が生活保護基準などを目安に認定基準を決めている。政府は、生活保護基準の変更を就学援助に反映させないよう各自治体に要請している。

本記事では,文部科学省における市区町村の就学援助に関する認定基準の変更状況の調査結果を紹介.現在のところ,同調査結果は同省HPでは確認ができず,残念(下名の確認方法が適切ではない可能性もありそうですが).公表後,要確認.
生活保護制度の生活保護基準額とリンクされているため,生活保護基準が引き下げられると就学援助費の所得制限も引き下げられてしまう恐れがある」*1となる同制度.本記事によると「1769市区町村のうち」「1697」の自治体は「基準を維持」であったことが分かる.
2014年6月9日付の朝日新聞では,個々の自治体での具体的な対応状況を紹介しており,まず基準維持を選択した自治体でも「引き下げ前の生活保護基準を使うなど影響が出ないようにした」自治体が「1123」,「生活保護基準と連動していない」自治体が「565」,「対象者なし」が「9」となり,方や「対象となる所得額を「生活保護基準額の1.3倍」などと連動する形で定め」た自治体は「71」*2であった,という.
現状維持の選択が,大宗を占めたことが分かる同調査結果(ただ,1つの自治体分が欠損しているのは何故だろう).とはいえ,「就学援助費の制度設計は自治体の裁量」*3となる同制度*4.今後の変更状況は要観察.

*1:阿部彩『子どもの貧困穸 解決策を考える』(岩波書店,2014年)193頁

子どもの貧困II――解決策を考える (岩波新書)

子どもの貧困II――解決策を考える (岩波新書)

*2:朝日新聞(2014年6月9日付)「就学援助対象、71自治体で縮小の恐れ 横浜・富山など

*3:前掲注1・阿部彩2014年:194頁

*4:2014年6月8日に開催させていただきました,日本公共政策学会の個別テーマセッション穸「政策実施のなかのルールと裁量のバランス:生活保護制度を事例に」でも,質疑応答のなかで一部お話を賜り,たいへん勉強になりました