川崎市の福田紀彦市長は25日、主に政治色の強い公務を担う特別職「特別秘書」を設置する方針を明らかにした。設置理由について、「施策実現に向け政財界などとの折衝や調整をより強力に行う必要性を感じてきた。市長の活動は政務を含むような公務もあり、一般職の秘書では対応できない」などと説明。関連条例案を9月開会の市議会第3回定例会に提案する。
 市長や市秘書課などによると、特別秘書は地方公務員法に基づき設置できる常勤特別職。主な職務内容は、市長の政策判断のために必要な政務情報の収集・分析、政治的な日程調整や会合に代理出席しての折衝や交渉など、市長の政務の補佐を担うとしている。
 条例案では、特別秘書の定数は2人以内で任期は1年。市長が任命し、再任も可能。給料は部長級を参考に、月額61万円を超えない範囲内で市長が定める。地域手当は給料月額の12%(最大7万3200円)、期末手当は年額最大約286万円で、退職金(約102万円)は任期ごとに支給するとしている。
 福田市長は「就任以来、市長のスタッフ職の充実が必要だと思うようになった。(人材は)私との信頼関係が第一。私の真意が相手に伝えられる折衝、交渉能力も重要だ。迅速に選んでいきたい」などと述べた。
 特別秘書は県や横浜市、東京都、大阪市などが条例で設置。黒岩祐治知事は菅義偉官房長官の元秘書を、横浜市の林文子市長は大学非常勤講師を特別秘書に充てている。
■一問一答
 福田市長が新設する方針を打ち出した特別秘書について、25日の記者会見での一問一答は次の通り。
 −なぜ今、特別秘書が必要なのか。
 「就任から9カ月たち、今まで以上に機会やネットワークを効果的に活用し、多くの方との意見交換や折衝を行い、迅速、的確に対応することが重要と痛感している。スタッフ機能の強化が重要だ」
 「公務と政務で切り分けが難しいところがあり、全部自分でやっていたものをスタッフ職にやってもらいたい。効率的、効果的な市政運営に資すると思う」
 −公務と政務の線引きや透明性を確保する仕組み、規則を設けるのか。勤怠管理は誰がするのか。
 「新たな仕組みをつくる考えはない。純然たる政務はできないという指導はするが、公務と政務の微妙な境は一般職にはできないからやってもらわないと困る。任命権者の私がしっかり管理していきたい」
 −任命する人物像は。
 「私の唯一のスタッフ職なので、私との信頼関係が第一の条件。対外的な調整・折衝能力にたけた人を任用したい。まったくもって白紙ということはない」
 「現状では調整、折衝がメーンの仕事になる。ある意味裏方の仕事で、例えば有名な元総理の補佐官といったイメージではない」
 −副市長では役割を果たせないのか。
 「特別秘書は何も所管せず、職員に対する指揮命令系統もない。副市長はスタッフ職と同時に所管するライン職の役割もある」
 −政治的な条例案に市議会の理解は得られるか。
 「そもそも政治的なものとの認識がない。市政運営上、最も効率的で効果的な組織をつくるだけだ」

本記事では,川崎市における特別秘書の設置方針を紹介.
2014年2月17日に開催された市長記者会見では,「こういったものというのは,大変重要な,かつ必要ではあるなというふうには思っておりますけれども,現時点で具体的に検討しているということではありません」*1との見解を示されていた特別秘書の設置.本記事によると,「定数は2人以内で任期は1年」「市長が任命」し「再任も可能」となり「給料は部長級を参考」として「月額61万円を超えない範囲内で市長が定める」旨を規定する同職設置に関する条例案を「9月開会の市議会第3回定例会」へ提案を予定されていることを紹介.
「干し草の山の中から,最も鋭い針を探すのは,縫うのに十分な鋭さの針を探すのとはわけが違う」*2と解されるなか,同職設置後の選考過程は,要観察.

*1:川崎市HP(市政情報市長の部屋記者会見平成26年記者会見 2014年(平成26年)2月17日会見)「市長記者会見記録」(日時:2014年2月17日(月)午後2時〜午後2時49分)16頁

*2:ジェームズ・G・マーチ, ハーバート・A・サイモン『オーガニゼーションズ第2版』(ダイヤモンド社,2014年)179頁

オーガニゼーションズ 第2版---現代組織論の原典

オーガニゼーションズ 第2版---現代組織論の原典