会議の政治学〈2〉 (慈学選書)

会議の政治学〈2〉 (慈学選書)

森田朗先生より,ご恵与賜りました.誠にありがとうございました.
前著『会議の政治学』は,審議会とはどのようにつくられ,動かされているかという点から描かれたとすれば,本書は,会議(審議会)をいかに動かすのか,特に,座長という立場から会議(審議会)での時空間を共有する人々を,どのようにコントロールするかが,本書の焦点にあると拝読しました.とはいえ,会議に集う(集わされる)「人間は感情の動物」(75頁)です.委員たちは「自尊心と意地」(185頁)をもち,「顔」(第2章)に拘ります.その行動は時にユーモラスですが,実際にコントロールすることは困難です.
特に「手間暇をかけ,「顔」を立てて誘導しなければならない」(21頁)のが会議です.そこで,会議での発言順序や発言時間,委員への話しかけ方,さらには空気の作り方など,座長には困難極まりない会議(審議会)運営技術が期待されます.本書には,これらの実践的な含意が随所に含まれております.もちろん,本書を読めば,明日から優れた座長になれるとは限りません.この域に達するにはやはり「実践での鍛錬が必要」(27頁)です.高度な運営技術のさばきかたには魅了されます.
読了後,運用技術への着目はなぜだろうと考えてみると,森田先生の最初の著作『許認可行政と官僚制』以来の,コントロールへの洞察に基づく研究との連続性を強く想起しました.なるほど,実践での経験は,理論に裏打ちされているのだなと改めて思いながら拝読させていただきました.今後とも,研究として,または,実践としても,本書を大切に繰り返し拝読させていただきます.
心より御礼を申し上げます.誠にありがとうございました.