今年4月に生活困窮者自立支援法が施行され、全国各地の自治体が、生活が苦しい人向けの無料の相談窓口を開く。自治体の担当者らは「自分の部署のことだけ考える」といった縦割り意識を封印。役所内のさまざまな部署や外部の団体などと連携して支援策を考える。ただ、自治体によって取り組み姿勢には大きな差がある。
 制度の正式スタート前から、モデル事業として先行して取り組んでいる自治体も多い。国や自治体には、生活困窮者を支援して生活保護受給者の増加を抑える考えもある。そのため、名古屋市は昨年七月末、名古屋駅から徒歩約十分のビル三階に「名古屋市仕事・暮らし自立サポートセンター」をオープンさせた。大熊宗麿(むねまろ)センター長は「われわれのアドバイスを受けて生活が立て直せそうになり、お礼の電話をしてくれた相談者が何人もいます」と、手応えを説明する。
 市社会福祉協議会、ホームレス支援に実績がある社会福祉法人、就労支援をしてきたNPO法人三者が共同事業体をつくり、センターの運営業務を名古屋市から委託された。支援スタッフは八人。相談対応の支援員が四人、就労準備支援員が三人、家計相談支援員が一人という体制だ。相談者がセンターに来られないときには、相談支援員が相談者を訪問することもある。オープンから今年一月末までの来所相談・訪問面接の件数は合わせて二百二十六件。「生活費が足らない」「仕事が見つからない」「家賃を滞納してアパートを追い出されそう」といった相談が多い。
 この制度の法定の支援メニューは、入り口の相談以外では(1)離職によって住まいを失った人に支給する住居確保給付金(2)就労に必要な訓練を行う就労準備支援(3)家計管理の指導などをする家計相談支援(4)生活困窮家庭の子どもの教育を助ける学習支援−など。相談支援員が役所のさまざまな部署や外部団体と連携するのが、この制度の特長だ。
 大熊センター長は「生活費がなく収入を得るあてがないときには生活保護の担当部署につなぐ。急場を乗り切るため無料で食料を提供してくれるフードバンク団体に支援要請することもある」と説明する。センターが連携する外部団体は、ハローワークや法律家団体、NPOなど多彩。名古屋市は今夏にセンターを三カ所に増やす予定だ。
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 福祉事務所を設置している自治体は四月から、全て生活困窮者向けの無料相談窓口を設けなければならない。ただ、この制度で自治体が必ず実施しなければならない支援事業は、相談支援と住居確保給付金だけ。その他の支援事業は実施してもしなくてもいい。
 この制度の先進自治体である滋賀県野洲(やす)市が、昨年四月から今年二月末までに特定できた相談者の数は百三十八人。その半数近くは市の他部署や外部団体から紹介された。花園大社会福祉学部の吉永純教授は「税や社会保険料の滞納が把握できる部署などが協力して、生活困窮者を見つけて相談窓口につないでほしい。そうした連携がポイントだ」と解説する。(白井康彦)

本記事では,名古屋市野洲市における生活困窮者自立支援法施行に向けた取組を紹介.
野洲市では,「暮らしの中の困りごと」への「市民相談」,「消費者トラブル,多重債務相談など」の「消費生活相談」,「弁護士会司法書士会」による「法律相談」,「税理士会」「行政書士会」による「税務相談・行政書士相談」,「総務省」による「行政相談」,「生活困窮者自立促進支援モデル事業」となる「生活困窮相談」,ハローワークとの一体的な実施となる「やすワーク」,「社会福祉協議会へ委託」する「家計相談」の「相談機能」を「集約」*1.これにより「相談者はたどり着けない」*2ことが回避され,相談者が「ワンストップ」で「受け止められ」,「何も言わなくても発見」*3も可能となることを企図されている.
「縦割りの弊害打破,行政とともに民間の課題」*4と解されるなかで,行政組織内,行政と民間,そして,民間間での連携による相談から対応状況は,要観察.

*1:野洲市HP(くらしの情報しごととくらしの相談)「資料」(野洲市 市民生活相談課,平成27年1月)2頁

*2:前掲注1・野洲市(資料)21頁

*3:前掲注1・野洲市(資料)22頁

*4:湯浅誠『ヒーローを待っていても世界は変わらない 』(朝日新聞社,2015年)218