総務省の「投票環境の向上方策等に関する研究会」は、選挙の投票率向上のため、有権者が選挙当日の投票所を選べたり、期日前投票の投票時間を柔軟にすることなどを柱とした報告をまとめた。
 同省は来年の参院選からの導入を目指し、法改正の準備を進める。公職選挙法では、有権者は選挙当日、選挙管理委員会が指定した1か所の投票所でしか投票できない。報告では、期日前投票所が駅構内やショッピングセンターなどに既に設けられていることを踏まえ、当日もこうした場所の利用を可能にするよう求めた。
 「二重投票」の防止策としては、民間事業者が提供するネットワークや自治体の庁内LANの拡張などで投票所同士をオンラインで結ぶよう提案した。期日前投票については、午前8時半から午後8時までの現状を改め、朝の出勤時間やショッピングセンターの閉店時間に合わせた弾力的な運用を求めた。(近藤修史)

本記事では,総務省における投票環境の向上方策等に関する検討内容を紹介.
同省が,2014年6月に「選挙の公正を確保しつつ,有権者が投票しやすい環境を整備す るための具体的方策等について研究・検討を行うことを目的」*1に設置した「投票環境の向上方策等に関する研究会」*2.本記事では,同研究会が,2015年3月27日に公表した「中間報告」*3の内容を紹介.
中間報告では,「ICTを活用した投票環境の向上」「期日前投票等の利便性向上」「選挙人名簿制度の見直し」*4について検討されており,さらに,一つめの項目では,「他市町村不在者投票の投票用紙等のオンライン請求」「都道府県選挙の選挙権に係る同一都道府県内移転時の取扱いの改善」「投票所における選挙人名簿対照のオンライン化」「選挙当日における投票区外投票」,二つめの項目では,「期日前投票の環境改善」「最高裁判所裁判官国民審査期日前投票期間等の見直し」,三つめの項目では「選挙人名簿の内容確認手段の閲覧への一本化」「選挙人名簿の登録制度の見直し」が検討されている.本記事では,特に,一つのめの項目である「ICTを活用した投票環境の向上」のうち,四つめの「選挙当日における投票区外投票」に関する検討結果を紹介.同中間報告では,「投票区外投票については,個々の有権者の投票環境を実質的に向上させる可能性があるものとして、さらに検討を進めることが適当」*5との見解が示されている.
他方で,「投票機会の平等や有効投票の確定」という「選挙の正統性を作りだす根幹」と「利便性の追求とのバランス」*6の確保への懸念も示される.これに対しては,「二重投票を防止するために,投票所間で,有権者の投票済み情報を共有する仕組みを構築することが不可欠」*7とするとともに,「投票に関して都市部と地方部では課題が異なる等の事情」から,各自治体の「判断に委ねるのが適当である」*8とも述べる.法改正実現後の,投票所の開設状況は要観察.

*1:総務省HP(組織案内研究会等投票環境の向上方策等に関する研究会)「投票環境の向上方策等に関する研究会」開催要綱

*2:総務省HP(組織案内研究会等)「投票環境の向上方策等に関する研究会

*3:総務省HP(広報・報道報道資料一覧2015年3月投票環境の向上方策等に関する研究会 中間報告 平成27年3月27日)「投票環境の向上方策等に関する研究会 中間報告」(投票環境の向上方策等に関する研究会,平成27年3月)

*4:前掲注3・総務省(投票環境の向上方策等に関する研究会 中間報告)2頁

*5:前掲注3・総務省(投票環境の向上方策等に関する研究会 中間報告)7頁

*6:砂原庸介『民主主義の条件』(東洋経済新報社,2015年)203頁

民主主義の条件

民主主義の条件

*7:前掲注3・総務省(投票環境の向上方策等に関する研究会 中間報告)7頁

*8:前掲注3・総務省(投票環境の向上方策等に関する研究会 中間報告)7頁