国の二〇一六年度税制改正をめぐる論議で、地方創生を名目に都の財源を奪う動きが拡大する懸念があるとして、都は十五日、地方間の財源の奪い合いではなく、「共存共栄」をキーワードに日本全体の発展を目指すべきだ、とする国への反論を発表した。
 都によると、偏りのある地方財源の是正を名目に、都税の一部を国税化して地方に配分する国の措置によって、〇八年度以降に累計一兆三千二百億円が国に奪われてきたと説明。現行制度の年三千億円から、消費税率10%段階ではさらに都の財源が奪われる可能性があり、年五千八百億円に膨らむ懸念があるとみている。
 こうした国の措置への反論として、都は「行政サービスの対価として納税する応益性の原則に反する」などの十項目を列挙。地方が経済活性化などに頑張って税収を増やしても、国に奪われる金額も増えるため「頑張る自治体ほど報われない」とも訴えた。
 さらに、都が主張する「共存共栄」の具体策として、東京と各地を結ぶ新たな観光ルート設定のほか、日本全国の魅力を紹介するため、来年一月に東京ドーム(文京区)で開催する「ふるさと祭り東京2016」などを例示した。
 事業改善の事務局を担う県行政改革課の井出英治課長は今後の実施へ向け「いただいた意見を参考に工夫したい」と述べた。

 菅義偉官房長官は16日の記者会見で、民間企業が自治体に寄付した場合に、一定額を法人住民税などから差し引いて税額を軽くする「企業版ふるさと納税」の創設に反対する舛添要一東京都知事に反論した。「地方創生に取り組む地方を応援する視点にたっている」と主張した。同時に「都を含めた全国の自治体の意見を踏まえて具体的な制度設計をしていく」と語った。政府は2016年度税制改正で企業版ふるさと納税の創設をめざしている。

両記事では,東京都における地方税財政への主張及び政府の見解を紹介.
同都より,2015年9月15日に示された『共存共栄による日本全体の発展を目指して〜地方税財政に関する東京都の主張〜』*1.同主張では,まず税制改正案に対しては,「地方税の応益性の原則に反する」「頑張る地方自治体ほど報われない」「地方交付税の不交付団体が増えない」「地方自治体間の対立を生む」「税収格差のみによる比較は一面的である」「「財源超過額」は配分技術上の数字にすぎない」「都は財政基盤の強化に向けた取組を進めてきた」「都には大都市としての膨大な財政需要がある」「都には少子高齢社会に対応するための膨大な財政需要がある」「都の財政需要は今後更に増加する」という10の「反論」*2を示したうえで,「不合理な偏在是正措置を撤廃した上で,権限に見合った地方税財源を拡充」*3する,「地域間でヒト・モノ・カネを奪い合うのではなく,互いの結びつきを強化 することで,共存共栄の関係を構築していくことが必要」*4と主張されている.第二記事では,2015年6月30日付の本備忘録でも記録した「企業版ふるさと納税」に関しては,「実質的な税収移転となり,受益と負担の原則に反する」こと,「そもそも,企業のふるさととはどこなのか?」ということ,「問題点 ・地方自治体間で,寄附獲得に向けた競争が過熱する可能性がある」こと,「都や特別区への寄附が,税制優遇の対象外となる可能性がある 」こと,「都にとって大きな税収減を招く可能性がある」ことを「問題点」*5とする同主張に対しての政府側の見解を紹介.
税制改正の具体化のなかでの,「自治体への帰属のあり方,あるいは連帯の宛先」*6の整理の結果は,要確認.

*1:東京都HP(これまでの報道発表2015年9月共存共栄による日本全体の発展を目指して〜地方税財政に関する東京都の主張〜平成27年9月15日 財務局 主税局)「共存共栄による日本全体の発展を目指して 〜地方税財政に関する東京都の主張〜」(東京都,平成27年9月)

*2:前掲注1・東京都(共存共栄による日本全体の発展を目指して 〜地方税財政に関する東京都の主張〜)10〜22頁

*3:前掲注1・東京都(共存共栄による日本全体の発展を目指して 〜地方税財政に関する東京都の主張〜)25,26頁

*4:前掲注1・東京都(共存共栄による日本全体の発展を目指して 〜地方税財政に関する東京都の主張〜)27頁

*5:前掲注1・東京都(共存共栄による日本全体の発展を目指して 〜地方税財政に関する東京都の主張〜)7頁

*6:嶋田暁文, 阿部昌樹, 木佐茂男編著,太田匡彦, 金井利之, 飯島淳子著『地方自治の基礎概念』(公人の友社,2015年)186頁

地方自治の基礎概念

地方自治の基礎概念

  • 作者: 嶋田暁文,阿部昌樹,木佐茂男,太田匡彦,金井利之,飯島淳子
  • 出版社/メーカー: 公人の友社
  • 発売日: 2015/08/31
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログ (5件) を見る