東日本大震災の被災自治体に対する「ふるさと納税」の寄付が激減している。震災直後には、復興に役立ててもらおうと全国から多額の善意が寄せられたが、一時的な急増にとどまった。特産品などを贈る「返礼品」でふるさと納税が全国的なブームになるにつれ、返礼品を贈る余裕のない被災自治体があおりを受けている。 (山口哲人)
 総務省によると、震災直後の二〇一一年度、岩手、宮城、福島の被災三県に寄せられたふるさと納税を中心とした寄付額は計四十八億円近く。全国の寄付総額約百二十一億円の39%を占めた。全国のふるさと納税は一三年度以降、返礼品の効果もあり急増。一四年度は約三百八十九億円と一一年度の三倍以上になった。
 一方、被災三県への寄付総額は反比例するように落ち込んだ。一四年度は一一年度の半分に満たない計約二十億円で、全国に占める割合は5%に縮小。三県内の自治体別では、津波に襲われた沿岸部の三十七市町村のうち、二十四市町村で一一年度の寄付額を下回った。岩手県釜石市では一一年度の十一億円から一四年度は千七百万円に激減。担当者は「震災の記憶の風化が影響している」と話す。
 こうした状況を改善するため、返礼品の充実に力を入れている被災自治体もある。
 宮城県石巻市三陸沖で捕れたサバとイワシ、サンマが入った「干物セット」など海産物を中心に約百種類の返礼品を用意。福島県広野町は三万円以上の寄付者に地元産コシヒカリを一俵(六十キログラム)贈り、東京電力福島第一原発事故風評被害の払拭(ふっしょく)を図る。岩手県陸前高田市も、市内の商店で使えるお買い物券など約百種類から選べる。
 だが、復興が最優先で返礼品を拡充できていない自治体も多い。寄付額が一一年度の二億円から、一四年度は三千五百万円に減った岩手県宮古市の担当職員は「返礼品を準備する余裕がなかった」と説明。原発事故の影響で昨年九月まで避難指示が出ていた福島県楢葉町への寄付は年間五十万円程度。担当者は「原発事故対応で返礼品を用意できなかった」と明かした。
 返礼品を売りにする自治体には、ふるさと納税は地方の活性化に役立つと歓迎する声もあるが、岩手大の井上博夫教授(財政学)は「ふるさと納税が特産品の『ネットショッピング』になり、返礼品を充実させられない被災自治体への寄付が減っている。お得な返礼品を贈る自治体に寄付が偏っている」と指摘した。
ふるさと納税> 自治体に2000円以上の寄付をすると、2000円を超えた額が所得税と住民税から差し引かれる制度。出身地以外の自治体に対しても可能。寄付額に制限はない。減税対象となる寄付額には上限があり、世帯構成や所得によって決まる。各自治体が返礼品に知恵を絞る寄付獲得競争になりつつあり、総務省は高額な商品や換金性の高い品物は贈らないよう通知している。

本記事では,岩手県宮城県福島県におけるふるさと納税の推移を紹介.
本記事によると,2011年度は「全国の寄付総額約120億円の39%を占めた」3県への寄付額が,2014年度では「全国に占める割合は5%」となり,「沿岸部の37市町村のうち」「24市町村で」「11年度の寄付額を下回」った模様.本記事後段で紹介されている宮古市は,2011年の「寄附金133,216,143 円」*1から2014年は「寄附金35,416,437 円」*2と推移している.同市では,2015年10月27日から「寄附していただいた方へ感謝の気持ちとして」の「返礼品の贈呈」*3を開始している.「ふるさと納税の勢い」*4が増すか,「災害義援金*5をはじめとする他の寄付,他団体への寄付も広がるか,要観察.