4年後に移転する予定の横浜市役所(中区)の現庁舎棟について、市は「市民に親しまれており、関内の歴史を継承する施設」などの理由で、解体せずに活用する方向で検討することを発表した。現庁舎棟を含む一帯は官民による大規模再開発の構想があり、交通の便の良さもあって開発業者らの注目を集めている。林文子市長は12日の定例記者会見で、来年3月までに跡地利用の具体的な事業方針を策定する考えを示した。(戸田貴也)
 現庁舎(延べ床面積約3万平方メートル)の場所は、市営地下鉄とJRが乗り入れる関内駅の正面。このほか、隣接する「民間ビル街区」に入る市役所機能は移転、近くにある教育文化センターは解体を条件に民間に売却される予定だ。計3か所の敷地面積は約2万8000平方メートルで、横浜スタジアムに匹敵する広さになる。
 市は今年1〜2月に、開発業者や大学など25団体を対象に一帯の市場調査を実施。各団体の意見を参考に、今回、「土地利用の方向性」をまとめた。それによると、現庁舎のうち、1959年に完成した庁舎棟(同約2万平方メートル)については、既存建物を活用する方針。各団体からも、事業費抑制や早期利用などを理由に同様の意見が多かったという。また、議会棟などその他の施設については、活用と解体の両面で検討するとした。
 庁舎棟は、横浜開港100年を記念して建築家の村野藤吾(1891〜1984年)が設計した。村野は戦後復興や高度成長期に「西の巨匠」と呼ばれ、主要国首脳会議「伊勢志摩サミット」の主会場となる志摩観光ホテルなどを手がけた。横浜市の庁舎棟には、無作為に配置されたベランダや窓などに特徴が出ているという。
 市場調査では、市が同じ中区の山下ふ頭にバス高速輸送システム(BRT)の導入を検討していることを踏まえ、駅前広場や観光施設を整備するという提案もあった。市都心再生課は「関内駅前を周遊観光の交通拠点にできれば、さらに人を呼び込める」と青写真を描く。
 市は「国際的な産学連携拠点」と「観光・集客拠点」の2テーマを軸に、地元や有識者の意見も踏まえて事業方針を検討。2017年度から事業者を公募し、市庁舎が中区内の「北仲通地区」に移転する20年6月以降、再開発事業に着手したいとしている。
 林市長は会見で、「庁舎棟と新しい建物をマッチングさせながら、事業を進めることが望ましい」と述べ、一体的な再開発を推進する考えを示した。

本記事は,横浜市における新庁舎建設に伴う現庁舎街区の土地利用の方針の検討状況を紹介.
2011年5月9日付の本備忘録にて「新市庁舎整備基本構想」の検討開始を記録以来,断続的に観察している同市の新庁舎建築の取組.本記事では,現庁舎の土地利用方針の策定予定を紹介.2016年4月8に公表された同市の「サウンディング型市場調査の結果」では,まず「開発・不動産事業者からは」「首都圏の貴重な駅前大規模事業地」であることから,「現市庁舎街区,民間街区,教育文化センター跡地を一体的に計画」しつつも「事業は区分したいとする提案が多く」,「土地活用」は「関内での業務ニーズは厳しい」との意見が示されつつ,「山下ふ頭開発と連携した観光用のホテル」「駅前の立地を生かした医療,商業,教育,居住の事業」が「提案」*1されている.
そして,「施設の配置」に関しては,「現市庁舎街区」は「教育,市民利用等の公共公益的利用」,「民間街区及び教育文化センター跡地」は「ホテル,居住,商業等の収益施設」と「とする提案」*2とともに,「既存庁舎棟」は「大規模商業施設の提案を除」くと,「関内地区のシンボル的施設として」さらには「コストの最小化や早期利用の視点」から「活用する計画が多数」*3示されている.「ニーズ」*4に基づく今後の土地利用方針の策定状況は,要観察.

*1:横浜市HP(組織市整備局都心再生課横濱まちづくりラボ現横浜市庁舎街区及び教育文化センター跡地の土地活用の方向性をまとめました)「現横浜市庁舎街区及び教育文化センター跡地の土地活用の方向性をまとめました」(平成 28 年4月8日 都市整備局都心再生課)

*2:前掲注1・横浜市(現横浜市庁舎街区及び教育文化センター跡地の土地活用の方向性をまとめました)

*3:前掲注1・横浜市(現横浜市庁舎街区及び教育文化センター跡地の土地活用の方向性をまとめました)

*4:野田遊『市民満足度の研究』(日本評論社,2013年)3頁

市民満足度の研究

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