東京都は20日、罰則付きの受動喫煙防止条例の骨子案を発表した。従業員を雇う飲食店は原則屋内禁煙にし、都内飲食店の84%が規制対象になる見通し。2020年の東京五輪では「煙のない五輪」を目指し、国の法案よりも規制対象を広くする。6月開会予定の都議会に提出し、2020年の全面施行を目指す。
 政府が国会に提出した健康増進法改正案は、客席面積100平方メートル以下の店を規制対象外としたが、都は面積に関係なく対象にする。ただ、たばこの煙を遮断するブースを設ければ喫煙を認め、設置費として最大300万円を助成する。また、従業員がいない家族経営などの飲食店は屋内の禁煙、喫煙を選択できる。
 保育所や小中高校では敷地内を禁煙とし、煙を遮断する喫煙場所の整備を認めない。国も敷地内禁煙とするが、喫煙スペースは設置可能だ。
 都は条例成立後、20年にかけ段階的に施行する。19年のラグビー・ワールドカップ前には店頭に禁煙、喫煙の表示を義務付ける。20年には罰則の適用を含め全面施行の予定で、違反した場合は5万円以下の過料を科す。
 小池百合子知事は20日の記者会見で「働く人、子どもを受動喫煙から守る方策を考えた」と強調した。都が検討していた面積を基準とした規制については、飲食業界などからの反対も多く導入を見送ったもようだ。
 国に比べて規制が厳しいといっても、海外に比べると緩い。五輪開催都市であるリオデジャネイロやソチは飲食店に喫煙専用室の設置も認めない完全な「屋内禁煙」にしている。都の対策に批判が出る可能性もある。
 国や都の規制の動きを受け、飲食店の中には対策に動き始めたところもある。串カツ田中は6月から、全体の9割にあたる約160店を全面禁煙にして喫煙室も設置しない方針だ。喫茶店を運営するドトール・日レスホールディングスは一部店舗で喫煙室を試験的に設置している。同社は「喫茶業態では客のニーズもあり急に全面禁煙というわけにはいかない」と、対応の難しさを話す。
 都議会の動向も焦点になる。公明党が賛成すれば、知事与党の都民ファーストの会と合わせ可決できる。公明は以前から受動喫煙対策を訴えており、賛成する見通しだ。

本記事では、東京都における受動喫煙防止規制の取組を紹介。
2017年9月11日付同年11月28日付同年12月8日付2018年1月31日付同年2月22日付の各本備忘録で記録した、同都による受動喫煙防止の条例制定の検討。その後、「実効性のある受動喫煙防止対策とするために、国の動向を見ながら、検討を重ねて」*1きた結果、2018年4月20日に、同都では「東京都受動喫煙防止条例(仮称)の骨子案」*2を発表。「国の法案をもとに」「都の条例案を上乗せ」し「都独自のルールを定めたもの」*3とされている。
「「人」に着目した都独自の新しいルールの構築」が特徴となり、「働く人」と「自らの意思で受動喫煙を避けることは困難とされる子供たち」の「二つの対策を柱としたもの」*4と位置づけている。具体的に同「骨子案」では、「多数の者が利用する施設等における喫煙の禁止」を規定することとされており、「学校、病院、児童福祉施設等、行政機関、旅客運送事業自動車・航空機」は「敷地内禁煙」とし、「屋外喫煙場所」の「設置」は「可」*5とする。「ただし」「幼稚園、保育所、小学校、中学校、高等学校等の施設」では、「屋外喫煙場所」の「設置」を「不可」としている。なお、これらの設置の不可は「努力義務」*6となる。
また、これらの「ほかの多数の者が利用する施設」と「旅客運送事業船舶・鉄道」は、「原則屋内禁煙」とし「喫煙専用室内のみで喫煙可」*7としている。「ただし」「一定の条件を満たした喫煙を主目的とする施設」「いわゆるシガーバーやたばこの販売店等」は「別の類型を設け、喫煙禁止場所としない」*8こととなる。さらに「原則屋内禁煙の施設であっても」*9、「客席面積100m²以下で、個人又は中小企業 (資本金5千万円以下)が経営」*10し、そして、「従業員がいない飲食店」では、「屋内の全部又は一部の場所を喫煙をすることができる場所として定めることができる」*11ことしている。なお、本条例案では「一般的な紙巻たばこ」のほか「葉巻、加熱式たばこなど喫煙に用いられるもの」を「対象」*12としている。
「立法事実」*13にしては、「働く人」と「子供たち」に対する「政策案として特定化」*14した同条例骨子案。今後は「区市町村の皆様や関係者」の「意見」を聴取しつつ、「条例案を取りまとめ」「6月の第二回定例会に提出をする予定」*15のもとで、条例の具体化の過程は要観察。

*1:東京都HP都政情報知事について知事の部屋知事の記者会見 知事記者会見/平成30年) 「小池知事「知事の部屋」/記者会見(平成30年4月20日)

*2:東京都HP(都政情報報道発表これまでの報道発表 報道発表/平成30(2018)年 4月)「東京都受動喫煙防止条例(仮称)骨子案について」(2018年04月20日 福祉保健局)

*3:前掲注1・東京都(小池知事「知事の部屋」/記者会見(平成30年4月20日))

*4:前掲注1・東京都(小池知事「知事の部屋」/記者会見(平成30年4月20日))

*5:東京都HP(都政情報報道発表これまでの報道発表 報道発表/平成30(2018)年 4月東京都受動喫煙防止条例(仮称)骨子案について)「東京都受動喫煙防止条例(仮称)骨子案」(東京都福祉保健局 平成30年4月20日)5頁

*6:前掲注5・東京都(東京都受動喫煙防止条例(仮称)骨子案)5頁

*7:前掲注5・東京都(東京都受動喫煙防止条例(仮称)骨子案)5頁

*8:前掲注5・東京都(東京都受動喫煙防止条例(仮称)骨子案)5頁

*9:前掲注5・東京都(東京都受動喫煙防止条例(仮称)骨子案)5頁

*10:東京都HP(都政情報報道発表これまでの報道発表 報道発表/平成30(2018)年 4月東京都受動喫煙防止条例(仮称)骨子案について)「東京都受動喫煙防止条例(仮称)骨子案のポイント」(東京都福祉保健局 平成30年4月20日)5頁

*11:前掲注5・東京都(東京都受動喫煙防止条例(仮称)骨子案)5頁

*12:前掲注5・東京都(東京都受動喫煙防止条例(仮称)骨子案)5頁

*13:田中孝男『条例づくりのきほん ケースで学ぶ立法事実』(第一法規、2018年)86頁

条例づくりのきほん ケースで学ぶ立法事実

条例づくりのきほん ケースで学ぶ立法事実

*14:松井望「課題設定と自治政策法務」北村喜宣・山口道昭・礒崎初仁・出石稔・田中孝男編『自治政策法務の理論と課題別実践 鈴木庸夫先生古稀記念』(第一法規、2017年)、289頁

自治体政策法務の理論と課題別実践-鈴木庸夫先生古稀記念

自治体政策法務の理論と課題別実践-鈴木庸夫先生古稀記念

*15:前掲注1・東京都(小池知事「知事の部屋」/記者会見(平成30年4月20日))